ホーム 新マガジン記事 連載・コラム: 【銀行展望】NBC監督報告書から紐解く現在進行形の銀行トレンド

カンボジアクロマーマガジン0号

カンボジア国立銀行(NBC)は5月8日、2023年度の監督年次報告書(Supervision Annual Report 2023)を発表しました。定期発行の本報告書にはカンボジア国内金融機関が報告した詳細なデータが収録され、どなたでも無料で閲覧できる状態でNBCウェブサイト上に公開されています。毎年の銀行セクターのトレンドを知る上で大変参考になる資料です。
最新の2023年末時点データによると、商業銀行58行および特殊銀行9行からなる銀行セクター全体の総資産は316.9兆リエル(対前年比17.1%増)、そのうち顧客預金残高の総額は188.1兆リエル(対前年比22.3%増)、また顧客貸付残高の総額は213.4兆リエル(対前年比14.8%増)と力強い成長を継続しています。

その一方で、純利益の大幅な落ち込みと平均不良債権率の上昇は気になるところです。2023年末の銀行セクター全体の純利益は2.0兆リエル(対前年比44.9%減)と2018年と同水準の金額となりました。2022年以降の銀行市場における平均預金金利上昇もこの一因と見られ、2024年現在、多くの主要な銀行では定期預金金利の利下げが進められていることから、今後の改善が期待されます。平均不良債権比率は2011年から2020年までは2%台と長く堅調でしたが、2022年には3.1%、2023年は5.4%にまで上昇しています。
NBCが実施してきた貸付条件緩和措置の終了や不動産市況の変化含めた様々な要因が影響しているものと見られ、今後の景気動向には引き続き注視されるべきところと思われます。

【  豆知識  】
カンボジア国内預金口座数は2020年以降も毎年大幅に増加し、2023年には約1920万口座(対前年比23.6%増)を記録しました。銀行サービスと決済のデジタル化による貢献がめざましいものと見られています。

小菅 義之

PPCBankジャパンデスク

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