ホーム 新マガジン記事 悠悠 私のカンボジア: 第四景「アンコール・ワットの夜明け」

カンボジアクロマーマガジン4号

「アンコール・ワットの夜明け」紙本岩絵の具 300cm×150cm

 

 この絵は二〇一四年にカンボジア日本大使館に寄贈をさせて頂きました思い出深い作品ですが、制作したのは〇九年でした。思い出せばこの絵を描くのに、何度も何度も足を運んでスケッチに出かけたものでした。私のライフワークであるカンボジアの主なテーマは自然と生活ですが、やはり一度はカンボジアのシンボルでもあるアンコールワットを描く必要がありました。
 余談ですが絵描きは偉大なものをあまり描きたがらないものです。なぜなら自分の主観が自由に入りにくいからです。富士山も同じで誰が描いても余り個性が出せないですね。しかし私の師である(故)片岡球子先生の富士山は別格に個性的でした。
 話を戻しますが当時はまだ観光客も少なく、どこでも自由に最適な場所を取ることができました。この絵は私の中で唯一のアンコールワットを描いた大作です。朝四時には起きて自分のバイクで走り、五時からアンコールワットの背後から登ってくる朝日を何度も待ち、そしていつの朝日も違った美しさを見せてくれました。作品は、昼間にアンコールワットをスケッチしてそれを基に構成し、後は自分の脳裏と心に残っている朝焼けの印象を自分なりにイメージし直して、何度も納得がいくまで腕を運びました。中でもやはり色が一番重要でした。朝日が実際に現れる前、あたり全体が茜色に染まり、まるで空気そのものが茜色に感じ、偉大なアンコールワットをシルエットにしてこの世の世界とは思えない美しさでした。その場の臨場感を出すのに随分苦労した覚えがあります。

 

 

著者紹介

山田 隆量 Yamada Takakazu

日本画家。日本美術院院友。法隆寺金堂壁画模写、名古屋城本丸御殿復元模写などに従事。王立芸術大学/王立プノンペン大学客員教授でYAMADA SCHOOL OF ARTの代表を務める。

A Japanese-style painter, who is a Visiting Professor at The Royal University of Fine Arts.


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