カンボジアクロマーマガジン27号
となりのとなりで。
第6回:豊かな大地
木村 彩湖
少し前、カンボジアでは野菜を育てる習慣は、ついここ数十年の間に始まったばかりだ、と言う話を耳にした。日本人の私としては、んん?じゃあ昔は野菜を食べなかったってこと?肉や魚ばかり食べていたとは思えないし、どういうことだろうと、疑問に思った。話を聞いてみるとどうやら、わざわざ育てずとも自然に生る実や果物、自生する野草や草花を食べて生きてこれたというのだ。寒く厳しい冬を乗り越えなければいけない日本では、いろんな種類の食物を冬に備えて保存食にし、どの季節にも食物に困ることがないよう、工夫して野菜を育てた。そもそも、放っておいたら日々のお腹を満たしてくれるほどの食料にはありつけない土地なのだ。はは~ん。そう思うと、これは国民性の違いにも表れているな…。と、いやに納得。日本人は厳しい環境で生き延びるために必死で備え、きっちり計画を立てて生き抜いてきたのに対し、どうやらカンボジア人のゆるさ、この土地と気候から来ているのだな。
実は人間が育てた野菜ばかり常食してきた私にとってここに来た当初はクセがあって食べにくいと感じていた、野草や香草。しかし何にでもモリモリ入っている香草も、これを生で食べちゃうの?と、ビックリするような野菜もけっこう好きになってきた近頃。何よりあの灰汁の強い個性的な味の香草や野草には、虫や鳥から身を守るための強い自然のエネルギーを感じる。
カンボジア人は4人家族で、もし5匹魚が捕れたら、余った1匹は川に戻すという話を聞いたことがある。明日の分は、また明日。のんびりとした性格は、こうした豊かな環境から生まれたのかもしれない。
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