カンボジアクロマーマガジン6号
私は2023年12月からJICA海外協力隊として、プノンペンにある「ボントラバエク高等学校」で体育教育の指導を行っています。
活動内容は、ボントラバエク高校に勤務されている体育担当の先生と協力しながら、体育授業の改善を行うことです。また、ボントラバエク高校のサッカークラブと私の学校を練習場としているナガワールドFCU-15の指導にも携わらせていただいています。短い期間ながらも、私が見させていただいているカンボジアの体育教育やスポーツの現場の事情を綴らせていただきます。
カンボジアでは2016年に中学校体育の学習指導要領が教育省に認定されたばかりで、それまでは単調な体操や整列などが授業で行われていました。そのため、新しい学習指導要領によって取り入れられた体つくり運動、リズム運動、器械体操、陸上、水泳、ボールゲーム、伝統スポーツの7領域20種目を指導できる先生が少ないという状況があります。当然ではあるのですが、指導する先生が新しい体育の授業を受けた経験がないからです。
私の学校の実態としては、一緒に授業を行なっている先生がルールや競技特性を理解している競技もあれば、ルールの理解すら乏しい競技もあります。そのような競技を子供達の前で自信を持って指導することはとても難しいことです。そのため、私が授業に入りながら先生ができないデモンストレーションを替わりに行い、授業終了後に先生と技能のデモンストレーションの練習をしています。
これらの状況は一端でしかありませんが、このようにカンボジアの体育教育は走り始めたばかりなのです。課題は多いですが、現地の先生と協力しながら少しずつ改善していきたいと考えています。
また、私が体育やサッカーの指導現場を見させていただいている中で感じることは、指導者と子どもの間に上位下達の関係が根強いことです。私の学校の先生には規律を重んじさせようとする余り、子どものプレー時間よりも整列の時間の方が長くなってしまう先生もいます。サッカーの指導現場でも、椅子に座りながらトレーニングの指示をしている指導者や、チームが負けたときに罰走を命じる指導者、子どもたちが懸命に試合をしているのにも関わらず、ベンチでタバコを吹かしている指導者など、この国ではまだ「指導者としての在り方」というものが日本に比べて軽視されています。国の歴史的背景も大きく関係していることだと思うので、私が変えることは難しいですが、私が関わる子どもたちには大人が子どもと共に伴走する姿勢を見せ、カンボジアのスポーツ界のために優れた人材を輩出する一助となりたいです。
JICA海外協力隊 プノンペン 体育 菊地雄登
独立行政法人国際協力機構(ジャイカ) カンボジア事務所
ジャイカは、日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、
開発途上国への国際協力を行っています。
Web: https://www.jica.go.jp/cambodia/index.html
Facebook: JICACambodia
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