カンボジアクロマーマガジンPP5号
カンボジアでは2030年までの高中所得国入りを目指し、様々な施策が実施されています。それに伴い、教育の観点からは、カンボジアの産業発展に貢献する人材を育てることを目標とした、教育戦略計画(2014-2018)が策定されました。この計画の実現を支援するため、JICAは2019年4月から5年間の予定で「産業開発のための工学教育研究強化プロジェクト」を実施しています。
プロジェクトでは、首都プノンペンやその他主要都市において日本式の「研究室中心教育(Laboratory-Based Education; LBE)」の導入を通じて、工学系の教育・研究能力の向上を目指しています。対象はカンボジア工科大学、王立プノンペン大学、国立バッタンバン大学、スバイリエン大学の4大学です。
研究室中心教育(LBE)という言葉は聞きなれない方も多いと思いますが、日本の工学系大学の多くでは、研究室の代表である教授をトップに、研究員、大学院生、学部4年生で構成されるチームでの研究を通じた実践的な教育が行われています。このような教育体制をJICAではLBEと呼んでおり、個別指導が中心の欧米の大学とは異なる、日本の工学高等教育に特徴的な形態と考えられています。チームでお互いに学び合い、協力することで、専門的な知識の習得・伝達はもちろんのこと、コミュニケーション能力やマネジメント能力、リーダーシップなども一緒に育まれるというメリットがあるといわれています。
プロジェクト活動の中心であるカンボジア工科大学においても、これまでは研究のための機材や指導できる教員が不足しており、座学中心の教育が実施されてきましたが、LBEの導入に伴い少しずつ研究室の体制・環境が充実してきています。また、学長をはじめ日本への留学を経験した教員も多く、彼らを中心に日本式工学教育の良いところを活かした取り組みが行われてきました。学生が研究室で実際に手を動かして実験をしたり、フィールドワークに出かけて現場の体験から学んだり、またチームの中で役割を果たす経験をすることが、研究者・エンジニアとしての自信を育てています。
プロジェクトは今月で終了を迎えます。これまでの活動を元に、カンボジアでLBEの文化がさらに根付き、工学教育・研究がさらに広がり、産業の発展を支える人材が持続的に輩出されることを願っています。
「産業開発のための工学教育研究強化プロジェクト」専門家
三宅智保(産学連携/業務調整)
独立行政法人国際協力機構(ジャイカ) カンボジア事務所
ジャイカは、日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、開発途上国への国際協力を行っています。
Web: https://www.jica.go.jp/cambodia/index.html
Facebook: JICACambodia
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