カンボジアクロマーマガジン26号
カンボジアの食というカテゴリーにおいて、個人的にとても惹かれていることがある。それは食べ物そのものではなく、食を得る過程で必ず人の存在がある、ということ。
スーパーに行くと世界各国の様々な商品が整然と並び、わたしたちは欲しいものをカゴにいれ、最後にまとめてレジに持っていく。するとバーコードを読み取って機械がピピッと素早く計算してくれる。店員のお姉さんが発する言葉はせいぜい、ポイントカードはお持ちですか?くらいのものである。とても便利だけれど、お店に入ってから出るまで一度も声を出さないことも。つまりコミュニケーションをせずに買い物ができてしまう。その点市場で買い物をすると、肉屋、魚屋、八百屋、それぞれのところまでいって、諸々の交渉を経てようやくゲットできる。売り手はその日自分が買える量だけ仕入れて売り、少しの利益をあげるのだ。(そもそも○○屋という表現自体が似合わないくらい、個人が少量を売っている。例えばトウモロコシだけとか。)う~ん、なんて非効率!しかしながら、売り買いの度に生じる会話。そこにグッとくるものを感じるのは、私だけ?
現在プノンペンは建設ラッシュで高いビルが建ち並び、次々に新しいお店ができ、街の様相が急変している。その中で近い将来、失われてしまうであろうもの。きっとそういうものは、このおばあちゃんお笑顔のように決まって数字やグラフには現れてこない、何か別の次元のもののような気がする。非効率でちょっと面倒臭いけれど、心温まる瞬間。そういうものが失われてしまうのは、悲しいものだ。
おばあちゃんが歩いて売るミカン、いつまで食べることができるかな。
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