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ホーム マガジン いせきを護る人たち: 第七回 現場担当者の声 D.S.スート氏

カンボジアクロマーマガジン43号

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第七回 現場担当者の声 D.S.スート氏

 

アンコールワットを修復する

 

 86年11月から88年5月まで、スート氏(30歳:当時)はインド政府の遺跡修復チームのメンバー(アシスタント)としてカンボジアに赴任した。そして一年半にわたりアンコール・ワット全般の保存修復工事を実施した。ポルポト時代終結直後のことであり、国内の混乱は想像を絶するほどであった時代のことである。15~20名のインド人専門家が駐在し、最初の一年間の宿泊はグランドホテルだったという。電気は無く、水は煮沸して飲んだ。食材は一部をインドから持ち込み自分たちで調理したという。もちろん、携帯もネットも無かった時代である。本国との連絡は大使館が行ったそうだが、不便だったことは想像に難くない。「一本のペンすら入手が難しかった」とスート氏は笑顔で語る。
 遺跡では300名を超える作業員を雇用し、大規模に大胆に遺跡の修復を進めた。一体どのように当時の作業員をまとめたのだろうか?正直に言って未だに想像ができない。当時は地雷の危険があるためタ・プロム遺跡には入ることができなかったという。バイヨン遺跡ですら見学が難しかったという。道路も悪く全てが今とは全く異なっていた。アンコール・ワット西参道を渡り左手の護岸修復も実はインド隊としてスート氏が修復した。上智大学が07年までに修復した第一工区(中央テラス以東、北側)と接する箇所であり、私がスート氏に特別に親近感を覚える理由の一つでもある。  
 88年に離任して国に帰るとASIのメンバーとしてインド国内で遺跡保存修復の仕事を継続した。

 

タ・プロムを修復する

 

 07年再度カンボジアに赴任した。今度はプロジェクト・チームリーダーとしてタ・プロム遺跡の保存修復チームを率いている。プロジェクト費用は全てインド政府が拠出している。大勢の作業員を雇用し日々修復作業が進む。プロジェクト期間の年限は決めていないという。
 ASIの事務所はアンコール保存事務所内にある。現在では3名のインド人専門家が駐在している。

 
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謝辞

 

スート氏は二度目の赴任で都合9年にわたりカンボジアに駐在し、アンコール遺跡の保存修復に尽くしてきた。私の印象としては、タ・プロム遺跡へ行くといつもスート氏の顔がある、そんなイメージが定着している。客人を連れて行きたいと相談すると、いつも快く受け入れてくださり、現場でも「ウエルカム!」と迎えてくださるスート氏には大変にお世話になってきた。氏の口からカンボジアを批判する言葉を聞いたことが無い。任期は残り一年半だという。インド政府の意向に忠実に任務を遂行するその誠実な人柄に畏敬の念すら覚えるのが本音である。取材を終えて、実際にはチャーイ(インド流ミルクティー)をご馳走になったにも関わらず、清涼剤を飲んだような爽やかな気持ちになれた。心より御礼申しあげたい。ナマステ。

 

D.S.スート氏

1956年インド北部のウッタル・プラデーシュ州ラリトプール生まれ。大学で土木工学を学ぶ。1986年よりASIのアシスタントとしてカンボジアに駐在し、アンコール・ワットの保存修復に尽力する。1994年より1年間イギリスのヨーク大学にて保存修復を学ぶ。2007年にASIプロジェクト・チームリーダーとして再度駐在し今日まで継続中。タプロム遺跡の保存修復プロジェクトの中心的役割を果たす。*2014年11月18日、シェムリアップにてスート氏に取材したデータに基づく。

 

三輪悟(みわ・さとる)

1974年東京生まれ。1997年よりアンコール遺跡国際調査団に参加。1999年日本大学大学院修士課程(建築学専攻)修了。現在、上智大学アジア人材養成研究センター現地責任者。

 

上智大学アジア人材養成研究センター

上智大学の石澤良昭教授が所長を務める研究機関。『カンボジアの文化復興』と題する報告書を1989年より年度毎に刊行している。「カンボジア人による、カンボジアのための、カンボジアの遺跡保存修復」をモットーとし、当初より一貫してカンボジア人の人材養成の重要性を説き、継続的に活動を展開している。

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三輪悟(みわ・さとる)

1974年東京生まれ。1997年よりアンコール遺跡国際調査団に参加し、カンボジアを訪れる。1999年日本大学大学院修士課程(建築学専攻)修了。同年よりシェムリアップ駐在を始める。現在、上智大学アジア人材養成研究センター現地責任者。

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