ホーム 過去のマガジン記事 いせきを護る人たち: 第三回 現場担当者の声 チェン・ラター氏

カンボジアクロマーマガジン35号

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第三回 現場担当者の声 マオ・ソックニー氏

 

ヴァンモリヴァン氏に憧れて

 

 ラター氏は、父から教えられたヴァンモリヴァン元国務大臣設計の在プノンペン近代建築作品群に憧れて、90年に王立芸術大学の建築学部に入学した。丁度上智大学アンコール遺跡国際調査団(以下、調査団と呼ぶ)が91年から始めた集中講義を受講し、石澤教授(上智大学)ほか各分野の専門家の薫陶を受けた。それが契機となり94年に調査団の研修生としてシェムリアップを訪れ、初めてアンコールワットを目にした。父から聞いていた素晴らしい遺跡群を実見し、結果的に現代建築から古代建築へ興味関心が移った。

 大学を卒業後、98年より調査団の常勤職員(建築専門家)第1号として雇用され、シェムリアップに移り住んだ。学生時代より関わってきたアンコールワット西参道の実測調査図面を完成させ、99年暮れから始まった西参道解体工事現場を指揮した。

 

日本で学ぶ

 

 2000年に神奈川県の技術研修員に選抜され、10ヶ月間ほど日本に滞在し建築CADを学んだ。カンボジアへ帰国後は、再び西参道現場で働いた。次に改めて日本政府の奨学金を得て、04年から1年間マレーシアで日本語研修を受けた後、05年より日本大学理工学研究科(建築史建築論研究室、指導教官は故片桐正夫・日本大学名誉教授)で学んだ。苦学の末07年に修士号、09年には博士号を取得した。博士論文のタイトルは『クメールレンガ造建築の構造技術の発展過程に関する研究』であった。

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アプサラ機構に入る

 

 09年祖国へ戻り、翌10年よりアプサラ機構アンコール地域外遺跡保護管理局に勤務した。局の担当地域は、「シェムリアップ州内の世界遺産アンコール遺跡群の指定範囲以外の全て」と広大である。具体的にはコーケー、ベンメリア、クバルスピアン、クーレン山遺跡群、古代橋、などが管轄の対象となる。局での活躍が評価され、14年8月には局長代理に昇格した。20名の技術スタッフを含め、作業員や警備員など合せて約230人の長を務める。

 将来の夢は?との問いに対しては、「日本で学んだ知識、カンボジアで得た経験、それらを若い世代へ継承・還元したい。そしてカンボジア人が外国人に頼らずに遺跡を管理できる体制を創りたい」と答えた。上智大学が実施している人材育成は地道な作業だが、「継続は力なり」との思いを新たにした。我々外国人は、カンボジア人をそっと激励し続ける役割を負っている。

 

チェン・ラター

1971年コンポンチャム生まれ。1997年王立プノンペン芸術大学卒業。1998年より上智大学アジア人材養成研究センター常勤研修員。2005年より4年間日本国政府奨学金留学生として日本大学で学ぶ。工学博士。2009年カンボジアへ帰国。2014年8月よりアプサラ機構アンコール地域外遺跡管理局局長代理。

 

三輪悟(みわ・さとる)

1974年東京生まれ。1997年よりアンコール遺跡国際調査団に参加。1999年日本大学大学院修士課程(建築学専攻)修了。現在、上智大学アジア人材養成研究センター現地責任者。

 

上智大学アジア人材養成研究センター

上智大学の石澤良昭教授が所長を務める研究機関。『カンボジアの文化復興』と題する報告書を1984年より年度毎に刊行している。「カンボジア人による、カンボジアのための、カンボジアの遺跡保存修復」をモットーとし、当初より一貫してカンボジア人の人材養成の重要性を説き、継続的に活動を展開している。

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三輪悟(みわ・さとる)

1974年東京生まれ。1997年よりアンコール遺跡国際調査団に参加し、カンボジアを訪れる。1999年日本大学大学院修士課程(建築学専攻)修了。同年よりシェムリアップ駐在を始める。現在、上智大学アジア人材養成研究センター現地責任者。

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