ホーム 過去のマガジン記事 特集: いつか見た映画のような旅 カンボジア最高峰アオラル、深い森と共生する人々と歩く

カンボジアクロマーマガジン13号

いつか見た映画のような旅 カンボジア最高峰アオラル、深い森と共生する人々と歩く

[取材/写真/文]:西村 清志郎(クロマーマガジン編集部)

  さっき来た道を少し戻り、象の彫像のある村へと到着した。ここからレンジャー達との待ち合わせしている村までは悪路となりバイクでの移動となるそうだ。近くの屋台で白黒テレビを見ていた男性に商談を持ちかけると小額の謝礼で引き受けてくれることとなった。
 クロマーを頭に巻きつけ、バイクの後部座席に乗り込む。気持ちいい風が頬を流れていく。正面に広がる青空の下には白い雲が重なる。その下にうっすらと浮びあがってくる山脈。これがカルダモンなのだろう。

vol13_sub_02-01           カンボジア最高峰アオラル山1813m。富士山と較べると低いが

           村からの標高差は1600m程あ

1日目 午後 コンポンスプー~スラエコンバイ村(アオラル山麓)

  立派な門構えの寺院がある。どうやらこの寺院がレンジャーの指定した待ち合わせポイント“トロッピアンチャウパゴダ”のようだ。寺院すぐ脇の小さな雑貨屋でレンジャーと思しき男性が手を振っている。簡単な自己紹介と打ち合わせ後、再びバイクに乗り込み、山麓の村スラエコンバイへと向かうことになった。
  昨晩、この辺りで雨が降ったのだろう、途中の川には山から流れてきたであろう泥水が流れこみ、村人たちの手作り簡易木橋には子供達の運営する料金所が設置されていた。木橋の下では村の女性たちが泥水を気にせず洗濯にいそしんでいた。
  到着した小さな村、その端の東屋が本日の宿泊宿と決まった。
  登山がない国にはシェルパ(註1)と言う仕事など当然ない。レンジャーが明日から同行可能な即席シェルパ(村人)を募り、翌日の説明を始める。それを脇目に5分も歩けば終わる小さな村を散策する。豚やアヒルが我が物顔で道路を歩きまわり、牛の群れが余所者に対してキョトンとした眼を向けている。電気など無い村だ、太陽の出ているうちに水浴びしようとサロン片手に村人に訪ねながら近くの川へと向かう。木製の小さなパゴダを抜け、笹が生い茂る道の先にあった小川には先客があり、多くの牛が冷たい水を楽しんでいた。
 戻った宿にはレンジャーとシェルパがとれたての椰子酒を買い込んでおり、すでに小宴会モードに突入していた。19時を少し回った頃だろうか、焚火と月明かりのもとカンボジアの蛍が空中を漂っていた。

2日目 午前 アオラル山麓(スラエンコンバイ村)~アオラル山中腹(チョンノアターアイサイ)

  アオラル山越しに昇る太陽から、まぶしいばかりの光が朝露に注ぎこまれている。ここから山のとりつきまでは約10km、前日に手配していた農耕車に荷物と生きた鶏を載せ出発する。村人のほとんどが時計を持っていないため、待ち合わせ時間は太陽が昇ったら集合といったアバウトである。

vol13_sub_02-03                      今回の旅のお供となる鶏 

 

  農耕車でも進むことが出来ないポイントまで到着し、ザックを背負う。ふとシェルパを見ると今から最高峰に向かうというのにビーチサンダルを履いている。気負い過ぎている自分が少し大げさに感じ始めた。

vol13_sub_02-02           山のとりつきまでは人力もしくは農耕車を手配して荷物を運ぶ

  決められた登山ルートなどはない獣道。村人が野生動物や山菜取りに使用している道を登っていく。前を歩くレンジャーはなたを片手に山道に覆い被さってきている草木をなぎ倒し、木の幹に帰りの為の道標を残している。いくつかの沢を越し、倒れた大木を渡りながら黙々と進んでいく。所どころ初めて見る花や植物が芽を出し、野鳥や虫の声が聞こえてくる。
  登頂開始より4時間ほど経過した頃、標高1100メートル地点にあるチョンノアターアイサイに到着した。ここが今夜のビバーク(註2)ポイントだ。レンジャーとシェルパそして自分達で混合チームを作り、水汲み班、薪集め班、火起こし班、そして料理班がそれぞれの作業を始める。今晩の寝床である蚊帳付きハンモック、ターフの設置はレンジャーの指示の下、各自で行っていく。ヒルや害虫、それに猪や虎など様々な野生動物のことを考え、通常より高くハンモックを吊る必要がある。また、夜間の冷え込みの備え、乾燥した薪を十分に集め、ハンモック周辺でいつでも薪をくべられるようにしておく。
料理班の号令のもと、後半戦に備え、米と乾麺、そして少しだけピリ辛い缶詰の魚をお腹に詰め込んだ。

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