ホーム 新マガジン記事 JICAカンボジアリレー: 【JICAカンボジアリレー】カンボジアの教員改革に伴走!

カンボジアクロマーマガジンPP8号

教員養成大学は女性の高等教育就学を促している(筆者によるモニタリング調査)

日本は2000年代初頭からカンボジアの教師教育を支援してきました。ポル・ポト時代に教師などの知識人が殺害されたことの爪痕は深く、その再建には多くの歳月を要しています。2022年にOECD(経済開発協力機構)が実施したPISA(国際的な学習到達度調査)で、参加81ケ国中、日本は4位、カンボジアは最下位でした。

内戦終結後、カンボジアは「3+1(小学3年修了生が対象の1年間の教員養成)」から教員養成制度を再開し、段階的な改革を経てきました。質の高い教員を輩出することを目指して、日本は2017年よりカンボジアで初となる教員養成大学(プノンペン、バッタンバン)の設立と「12+4(高校卒業者が対象の学士レベルの教員養成課程)」の導入を支援しました。

今年7月、教員養成大学の第2期生の卒業式に出席されたフン・マネット首相は、「教師の質がよくならなければ、学生の質、つまりカンボジアの人材の質もよくならない」として、これまでの日本の協力への謝意と、これからも日本に学びたいという意向を表明されたことはとても胸に響きました。

フン・マネット首相ご臨席による教員養成大学卒業式 (提供:教育省)

私は教育政策アドバイザーとして、教育省に勤務しています。カンボジアでは特に地方・農村部における学校教育の質の低さが深刻であり、その是正を通じた学びの改善に向けた政策や戦略の策定を支援しています。調査の一環で、のべ100名以上の学校関係者や学生に教育現場の課題などについて聞き取りを行ってきました。さらに教育DXへの関心が高まる中、日本のEdTech企業の活用についても提言を行っています。

現在、教員養成大学は、JICA「教員養成大学強化を通じた基礎教育の質改善プロジェクト」に加えて、日本財団や認定NPO法人JHP・学校をつくる会など多様な日本の団体との協力協定、そして日本各地の大学との研究協定を結ぶなどして、日本との複合的な関係を深めています。

これまで約1,000人が教員養成大学を巣立ち、全25州の主に農村部の小中学校に新教員として配属されています。卒業生へのモニタリング調査で、「どうしたら子どもたちの学びが改善するか」についての実践研究を続けていることも明らかになっています。教員養成大学の評判の高まりから、カンボジア政府は、今後、教員養成大学を全国展開する方針を打ち出しました。これからも教員養成大学を軸とした教員改革に伴走していきます。

教育政策アドバイザー 松田 徳子

独立行政法人国際協力機構(ジャイカ) カンボジア事務所

ジャイカは、日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、

開発途上国への国際協力を行っています。

Web: https://www.jica.go.jp/cambodia/index.html

Facebook: JICACambodia


バックナンバー

facebookいいね!ファンリスト

クロマーマガジン

素敵なカンボジアに出会う小旅行へ―The trip to encounters unknown cambodia