ホーム 過去のマガジン記事 カンボジア映画、いまむかし: 第一回 : 黄金期(ゴールデンエイジ)

カンボジアクロマーマガジン41号

かつてカンボジアには映画の黄金時代があった。シアヌーク国王がカンボジア映画芸術興隆を目指し自らメガホンをとった1960年から、1975年のクメール・ルージュの首都掌握以前である。
 1958年のソム・サムオル監督によるカンボジア初の商業映画Phkar Rik Phkar Rouy(咲く花、枯れる花)の公開以降、黄金期の15年間に350作以上が国内で製作された。人気のテーマはカンボジアの伝承にちなんだファンタジー。空飛ぶ馬を駆る王や巨人、魔法使いが起こす奇跡の数々と創意を凝らした特殊効果は観衆を魅了し、とりわけPunthysen Neang Ko
ngrey(十二姉妹)のリィ・ブンイムや、ティ・リムクン、イヴォン・ヘムといった映画監督が人気を博す。初期の無声映画上映時の劇場では、活弁士がひとり何役もの吹き替えを熱演。プノンペン市内には30館以上の映画館が軒を連ね、地方では上映会場のパゴダに村人が押し寄せた。コン・サムウェン、ヴィチェラ・ダニー、ディ・サヴァットら主演俳優は人気者となった。
 また、1962年には仏人監督マルセル・カミュがL’oiseau de paradis(天国の鳥)を全カンボジア人キャストで国内撮影し、世界も注目した。
 この時代の映画界をけん引した監督は、他ならぬシアヌーク国王であろう。19歳からカメラに親しみ、国家構築における映画の重要性を信じた国王は、当時東南アジアで最も多作な監督として名を馳せた。1969年のThe Joy of Living(生きる喜び)では、クメール語とフランス語、伝統文化と西欧風のモダンな感性とが交錯し、ユーモアと茶目っ気もたっぷり。さまざまな文化を受容して独自の豊かさを築いた当時の多彩なカンボジア文化を映しだす傑作は、歴史資料としての価値も高い。

『The Joy of Living(生きる喜び)』

bophana_The Joy of Living_41

© King Norodom Sihanouk Collection Bophana Center


荒井和美

東京での映画配給会社勤務を経て2014年よりカンボジア在住。現在ボパナ視聴覚リソースセンター勤務。
ボパナ視聴覚リソースセンター

映画などのカンボジアの視聴覚資料を国内外から収集、デジタル保存、一般公開する施設。映画制作者の養成、アートイベントや映画祭の開催等広く活動する。


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素敵なカンボジアに出会う小旅行へ―The trip to encounters unknown cambodia