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カンボジアクロマーマガジン35号

~恐怖の抜け首~ アープのひみつ

[取材・文] 小林 真之輔  [制作・イラスト] 多賀 史文

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こ~いアープも、実はもともと普通の人間。カンボジアに伝わる「スナエ」とよばれる呪術の力によって、人ならざる妖怪になってしまうぞ!

カンボジアの呪術「スナエ」とアープ

心の悩みやからだの病気に、カンボジアでは占い・おまじないが今も使われている。そのルーツはカンボジアでの仏教の歴史よりも古く、魔術師が存在していたといわれる時代。当時から伝わる「スナエ」は、相手に自分への好意を抱かせることができる呪術で、恋愛などに使われるものだ。人の心を支配するその強い力を使うには、それなりの代償がいる。使い続けることで術者の中にも呪いがたまり、そのうちアープになってしまうのだ。

ただ、クメール・ルージュの大虐殺を経てスナエの伝承者は減り、最近はアープの目撃件数も少なくなっている。だがスナエ・アープのあるなしと離れたところで「あいつがスナエを使った」「あいつはアープだ」といった、普通の人間同士の疑い合いによる悲しい事件も起きている。

初代アープはクメール王女?

一説によると、14世紀末のクメール王女が最初のアープだとされている。その王女はアユタヤ王朝の貴族と望まない結婚をさせられるが、兵士に恋をしてしまう。だが夫にそれを知られ、火あぶりにされることに。燃えさかる炎の中、王女は黒魔術で逃げようとするものの間に合わず、頭と内臓だけが抜け出てアープとなった…とされている。実はタイにもアープにそっくりな妖怪がいて「グラスー」と呼ばれている。

わかる!3コマ漫画「カンタン。きみもアープになろう 」3koma-arp

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妖怪を恐れる人々が多くいる一方、カンボジア人はホラー映画が大好きだ。アープを扱った作品も多く、怖いだけでなく笑っちゃうような「変なアープ」が生まれているぞ!

ヘルメットをかぶったアープ (2012年、映画)

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田舎へ遊びに来た若者たち。夜、ひとりが不審な光を見つけて石を投げてみるとびっくり。そこには頭にケガをしたアープがいた!翌日、アープは市場でヘルメットを購入、平和な食生活(写真)を取り戻した。違う日の夜、若者たちは複数のおばけに遭遇して大パニックに。アープは騒ぎが収まるまで水がめに隠れようとしたところ、中には若者が隠れていた。ワッ!と叫んで思わずアープにパンチ!痛かったものの、ヘルメットをかぶっていたのでアープにケガはなかった…。

エレガント・アープ(2012年、TVドラマ)

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プノンペンに住む少女ポンニア。学校の長期休みに祖母とゲイのメイドが暮らす実家へ帰省していたある日、祖母が危篤になり、死に際にアープの力をうつされてしまった。毎日落ち込んで夜空を飛ぶポンニアだったが、ある日ちがうアープに出くわす。それは、水色アフロにピンク眼鏡をかけた実家のメイド!彼もまたアープだったのだ。身近なところに仲間がいてうれしくなったポンニア。ふたりは空中で、都会の生活やファッションなどの話に花を咲かせたのだった…。

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