カンボジアクロマーマガジン35号
人生迷走中
第15回:DQN製造機の汚名を返上できるか?
クーロン黒沢(くーろん・くろさわ)
昼下がりのイオンモールをふらふら。平日の真っ昼間に勉強も仕事もせず、自撮り棒につけたスマホのレンズにポーズを取るナルシストDQNたち。他人の国ながら大丈夫かと心配になってしまうが、そんなカンボジアでつい先日、全国統一の高校卒業試験が行われた。
カンボジアの試験と言えば、カンニングしてなんぼの出来レース。試験会場の周りにはカンニングペーパーや解答集が乱れ飛び、問題漏洩、携帯電話による外部との情報交換、スマホによる解答共有は当たり前。替え玉受験も珍しくない(相場は300〜400ドル)。
なぜこれほど不正行為がまかり通るのかと言えば、監督する立場の教師たちが賄賂を取って見逃しているからである。
インフレの進むカンボジアで、150ドルに満たない月給で暮らす公立学校の教師たち。学校の授業は副業で、放課後の有料補習クラスと試験シーズンの賄賂が本業と言っても過言ではなく、多くの教師がカンニングを見逃し、率先して手伝う者もいる。
試験期間中、警官隊が学校近辺を封鎖する理由が何なのか。ずっと不思議に思っていたが、つまりはカンニング防止のため。ま、そこまで警戒しても、やりたい放題だったわけたが……。
ところがである、教育省の方針変換で今年から突然事情が激変。警察に加え、反汚職ユニットから数千人の監視員が出動。去年まで見逃されていた不正が徹底的に排除され、前年までおよそ9割だった合格率が、なんと15%を切る衝撃の結果に!
このままでは高校生のほとんどが路頭に迷い、大学はもぬけの殻。そんな異常事態に政府も慌てたのか、救済措置の再試験が行われることになった。しかし猶予はわずか1ヶ月ちょい。
教育省は全国の公立学校に「再試験に向けた補習授業をしろ」と命じたが、教師からは「補習の手当ては出るのか?」と不満と動揺の声が。また、前回の試験に落ちたDQN生徒の多くが「スマホが使えないなら再試験を受けても無理」と、早くも進学を諦めており、今後の動向が注目されるところ。
思い起こせば数年前、ある進出企業の採用面接を手伝ったことがある。彼氏同伴で面接に臨む女なんてのは序の口で、母国語の作文能力は幼児レベル。10数名いた志望者のうち、プノンペンの地図を見て、自分が今どこにいるか説明できたのはひとりだけ。
なお、相手は上半身裸のおっさんとかではなく、かりにもプノンペンの有名大学を卒業した若者たちである。
皆さんがこのページをご覧になる頃には敗者復活の再試験もとっくに終わっていると思うが、この国を滅ぼさないためにも、今回の路線を堅持していただきたいものだ……なんて、あまりの衝撃で背中が総毛立ち、地図の読めた天才を思わず採用してしまったけど、結局、そいつもFacebookばっかりやってたなぁ……(遠い目で)。
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