ホーム 新マガジン記事 Joy Of Art: 【Joy of Art】ハチドリのひとしずく

カンボジアクロマーマガジンREP15号

南米の民話に、小さなハチドリのお話があります。
森が火事になり、動物たちが逃げ出す中、ハチドリだけはクチバシで水のしずくを運び、火に落とし続けました。「そんなことをして何になる」と笑う動物たちに、ハチドリは答えます。

「私は、私にできることをしているだけ」
(I’m just doing what I can)

 18年前、カンボジアに完全無料の小さな美術スクールを開校したときも、同じような始まりでした。その当時、食べて生きてゆくことが精一杯の人たちにとって「そんなもの何の役に立つ」「絵なんて描いて何になる」と、スクールへの反応は冷ややかでした。

 けれど、乾いた土に水が浸み込むように、絵を描く喜びは少しずつ広がっていきました。年月を経て成長したかつての子どもたちは、今では教師として380名もの次世代へその喜びを繋ぎ、自分たちの手で学校を運営しようとしています。学校教育に美術がない子ども達に、「表現する喜び」を伝えようとしています。

 ある授業の時、子ども達にハチドリのお話をしました。そして子どもたち全員が、それぞれのハチドリを描きました。小さな手から生まれたのは、作為のない純粋さと命の宿る線で描かれた、形も、表情も全く違うハチドリたちでした。

 ひとつの森に多様な命が息づくように、誰ひとり同じではない、それぞれの個性がそこにあること。その違いこそが豊かさであり、世界を美しく彩る力なのだと、子どもたちの描いたハチドリたちが教えてくれています。

笠原知子

 

 


小さな美術スクール Small Art School

元都立高校美術教師・笠原知子が2008年に開校した完全無料の美術スクールです。これまでに国内外で絵画展を実施。現在の生徒数は約450名。スクールの他に、2つの村への出張授業、カンボジア11州で美術授業を実施。

WEB:www.smallartschool.org 
メール:smallartschool@gmail.com
Facebook:SmallArtSchool

 


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