カンボジアクロマーマガジンPP7号
カンボジアの魚は日本では見慣れない魚が多く、市場やレストランで見てもピンとこない事がよくある。そんな中でも、ひと目見てわかる魚がいる。フグである。フグと言っても日本で有名なトラフグと比べるとかなり小さい(写真1)。手のひらに収まるかわいいサイズ。でも刺激を与えるとふくれるその様子は、紛れもなくフグなのだ。そして、カンボジアのフグは美味しい。
乾季の終わり、トンレサープ湖の水位の低いこの時期には、網の両端を漁師が人力で曳くという方法で漁が行われる。日の出前朝4時ごろから出港し、日没後の夕方6時過ぎにやっと帰ってくる。12時間以上にわたる長時間の漁の合間には獲った魚を使った料理でエネルギーを補給するが、そんな時に楽しみなのが淡水フグである。船上では香草と一緒に煮る事が多い。繊細な食感のフグ肉に香草の香りが乗って、とても上品な味がする。家では、丸ごと揚げて食べても美味しい(写真2)。プリップリの白身の弾力を存分に楽しむことができ、魚醤と一緒に食べるとご飯が何杯でも食べられる。市場価格も比較的高いフグをたらふく食べられるのは、漁村ならではでの贅沢なのかもしれない。私が滞在する村では、内臓や卵も含めて余す事なくフグを食べる人もいる。
フグをまるっと食べるというと、反射的に毒の心配をしてしまう。
そう、カンボジアの淡水フグの内臓には毒がある。フグの毒は餌由来であるが、日本でよく食べる海産のフグとカンボジアで食べる淡水フグでは毒の由来(餌)が異なる。一般に、海産フグ毒(テトロドキシン)とは異なり、淡水フグは麻痺性貝毒を保有する。カンボジアの淡水フグに関しては、その毒性や強弱に関する知識は断片的で、人によって意見がバラバラなのである。フグ食中毒による被害の特定、フグがどのように毒性を得ているかについては、現在も研究が進められている。研究成果が出た後、毒を気にせず美味な淡水フグを楽しみたいものである。
*フグは食中毒の可能性があるため食べる際はご注意ください。
(内臓・血液・皮など)
目指せ! カンボジアの魚博士!?
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程在籍。トンレサープ湖・カンボジアの人々に衝撃を受け,カンボジアの漁業・魚についての研究を志しました。
寄稿: 岡田 龍樹
Mail:kurumimaru1224@gmail.com
TEL: 096-743-6323
Facebook: Ryuju Okada
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