ホーム 新マガジン記事 カンボジアお魚だより: 【カンボジアお魚だより】雨季、小エビの季節

カンボジアクロマーマガジンPP12号

エビかごを削る漁業者

 

「ゴリゴリ、ゴリゴリ」

雨季でも容赦なく暑い昼下がり、トンレサップ湖周辺の村では何かを削る音がする。エビかごだ。30センチほどの網カゴを、スプーンで削っている。網カゴは円筒形で、両端から中心に向かってくぼんでおり、一度はいるとなかなか出られないようになっている。外側を、内側を、丁寧にゴリゴリ削ることで砂埃を落としていく。うず高く積まれたカゴは、300個ほどあるだろうか。エビ漁が始まる前、数週間かけてすべてのカゴをきれいにする。お昼ご飯のあと、日向で作業するには暑すぎる時間帯は日陰でコリコリ、ゴリゴリとエビかごをこすっている。

雨季のまっただ中である9月、10月によく獲れるのは、コンプッと呼ばれる小エビだ。

トンレサップ湖周辺は、乾季は陸だが雨季になると水没する。エビのかっこうの産卵場所であり、大量にエビが採れるのだ。エビの種類は特定できないが、長い脚を持つテナガエビ科が多いようだ。テナガエビは名前の通り長い手(脚)を持つ。ただ、長い脚を持つのはオスで、メスや特に小さいものは脚が短い。肉食性なので、エビかごの中には小魚を入れることが多い。

漁村での食べ方は多岐にわたる。ただ、おっちゃんたちは、ビール片手にむき身を生で食べる。コンソメ粉末にレモンを絞り、トウガラシを混ぜて激辛スパイスができる。プリっとしたエビにうまみと辛味がマッチしている。通常は、揚げたり、発酵食品にしたり、干物にしたり、スープに入れたりして食べる。市街やレストランでは、こぶみかんの葉っぱと一緒に揚げる“コンプッボンポーン”だ。

エビの季節、ぜひあなたもビールやちょっとしたおやつに小エビをいかがだろうか。

 

トゲ「ウナギ」だが、分類上はタウナギ目であり、ウナギ・ハモ・アナゴが属するウナギ目ではない。姿形も異なっていて、トゲウナギは口先に行くほど尖っており、先端にはヒゲのようなものがある。川や湖の中では、尖った口先を上手く使って砂に潜る。この性質、観賞魚として水槽で観る分には可愛いが、投網で捕まえた時は網に首を突っ込んでなかなか取れず苦労する。「トゲ」という名前は、背びれではなくて尖った口先が由来なのではないかと思うほどだ。

食べても観ても記憶に残るトゲウナギ。味に辛口の人が食べても、きっと舌を唸らせるだろう。

揚げられたテナガエビ

 

目指せ! カンボジアの魚博士!?

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程在籍。トンレサープ湖・カンボジアの人々に衝撃を受け,カンボジアの漁業・魚についての研究を志しました。

 

寄稿: 岡田 龍樹

Mail:kurumimaru1224@gmail.com

TEL: 096-743-6323

Facebook: Ryuju Okada


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