カンボジアクロマーマガジンPP13号
プノンペンで暮らして8年。去年になってようやく重すぎる腰を上げてクメール語の学習をはじめたのだが、一向に上達せず先生を苛立たせる日々が続いている。
わたしは語学習得が苦手な団塊ジュニアである。26歳から27歳にかけてニュージーランドでインターンをして暮らした際には、自分の英語力の乏しさに何度も泣いた。北島一周のひとり旅に出たとき、安宿で「bookしてあるか?」と英語で聞かれて、バッグパックからごそごそと本を取り出したのは嘘のような本当の話。受験戦争を勝ち抜くための対処療法的な英語の勉強しかしてこなかったし、そもそもわたしが通った高校の英語教師は英語が話せなかった。そんな時代の英語学習を6年やった世代だから仕方ないのだ、と時代のせいにしていた。
マクドナルドもハンバーガーもカタカナ英語がことごとく通じず、27歳にもなってバーガーひとつ買えない情けなさに涙を流し、帰国後一念発起して英語のガリ勉に励んだ。「増子さんってどこに留学していたのですか?」に対して「日本で独学ですけど、何か?」と答えるかっこいい自分を妄想することだけをモチベーションに。妄想通りには行かなかったが、今は英語で仕事をして生きているのだからあの涙は無駄ではなかった。
そういえば、クメール語は先生を困らせるだけで自身はまだ泣きを見ていない。一度大泣きするくらいの局面に立たないかぎり、わたしはクメール語を習得できないのかもしれない。
増子夕夏
おかっぱ書房 Okappa Shobou
プノンペンの片隅でいとなむ代書屋です。原稿の執筆から、Webのコピー、お手紙、など「書く」に関するお仕事をしています。
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