カンボジアクロマーマガジンPP11号
「キノボリウオ」という魚がいる。スズキ目キノボリウオ科の魚で、カンボジアでは年中見られる。よく跳ねるので、市場ではネットを張ったタライに入れられて売られている。もしくは鰓をはがされて売られていることが多い。身が引き締まっていてうま味があり、揚げたりスープにしたりして食べられるポピュラーな魚だ。
さて、キノボリウオは木に登るのか。木に登るために必要な条件は、
①空気中で呼吸できる
②陸上で移動できる
であろうか。
①キノボリウオは空気呼吸ができる。以前の記事『カンボジアでの人気魚、ライギョ』のライギョと同じく、”ラビリンス器官”という空気呼吸可能な鰓を持っており、陸上でも活動出来る。次に②、キノボリウオはひれの扱いが上手く、市場でぴょこぴょこと「お散歩」している姿を見かける。
とはいっても、私はキノボリウオが木を登るところを見たことがない。地元の人も、見たことがないという。地面を水平に移動することはあっても、垂直にとび跳ね続けることはないのだろう。雑食のキノボリウオはヤシの木に登らなくとも水中で十分に食べていけるようだ。
もし本当に木を登るとしたら、鰓蓋が重要な役割を果たすかもしれない。キノボリウは鰓蓋に鋭いとげがある。投網で捕まえると、この棘が網に引っかかって外すのに苦労する。水面から飛び跳ねた後、棘がたまたま木に引っかかることもありえる。それを見た人が、木に登っていると勘違いしたのかもしれない。
結論、キノボリウオは木に登らない、けれど陸上で散歩する。
スズキ目キノボリウオ科
Anabas testudineus / トライ・クランត្រីក្រាញ់
トゲ「ウナギ」だが、分類上はタウナギ目であり、ウナギ・ハモ・アナゴが属するウナギ目ではない。姿形も異なっていて、トゲウナギは口先に行くほど尖っており、先端にはヒゲのようなものがある。川や湖の中では、尖った口先を上手く使って砂に潜る。この性質、観賞魚として水槽で観る分には可愛いが、投網で捕まえた時は網に首を突っ込んでなかなか取れず苦労する。「トゲ」という名前は、背びれではなくて尖った口先が由来なのではないかと思うほどだ。
食べても観ても記憶に残るトゲウナギ。味に辛口の人が食べても、きっと舌を唸らせるだろう。
目指せ! カンボジアの魚博士!?
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程在籍。トンレサープ湖・カンボジアの人々に衝撃を受け,カンボジアの漁業・魚についての研究を志しました。
寄稿: 岡田 龍樹
Mail:kurumimaru1224@gmail.com
TEL: 096-743-6323
Facebook: Ryuju Okada
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