カンボジアクロマーマガジン8号
紙本 岩絵の具 1167mm ×910mm
この作品は2010年に名古屋と東京の大丸松坂屋で企画された私のカンボジアをテーマにした個展に出した作品の一つです。
1999年から始まったカンボジアへの一人スケッチ旅。テーマは「自然と生活」でしたが、それでも毎回遺跡は描きに行きました。遺跡の魅力はやはり崩れていることでしょうか。長い歴史の中で風化しながら自然の中に佇む姿は、元の形とは違った何かを訴えているかのようでとても魅力を感じます。この遺跡はアンコール・トムにあるバイヨンの一部で北側から見ています。回廊の屋根は完全に崩れ落ち、むき出しになっている数本の柱の存在感が背後の白く真っ直ぐに伸びた樹々との組み合わせにより、まるで自然が優しく長い歴史の中で見守っているかのように感じ、描き手である私の心を動かしました。樹々の重なったシルエットが美しく、そしてそれを幻想的に表現する必要から、スケッチを作品にする際に夜の情景にしました。
実際に夜のバイヨンを見たことはありませんが、1994年に私に初めてカンボジアを訪れる機会を与えて頂きました日本美術院同人の月岡榮貴先生(故人)が、昔見たバイヨンと月が本当に今でも美しく思い出されるとおっしゃっていた事を思い出し、自分なりにその情景を想像して描きました。
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バックナンバー
- 第八景 「バイヨンの月」 カンボジアクロマーマガジン8号
- 第七景 「大地の木陰」 カンボジアクロマーマガジン7号
- 第六景 「踊るパラソルの下で」 カンボジアクロマーマガジン6号
- 第五景 「洗濯物と自転車」 カンボジアクロマーマガジン5号
- 第四景「アンコール・ワットの夜明け」 カンボジアクロマーマガジン4号
- 第三景「暮れゆくメコン」 カンボジアクロマーマガジン3号
- 第二景 「まるでドリームランド」 カンボジアクロマーマガジン2号
- 第一景 「眩」 カンボジアクロマーマガジン1号
- 第九景 「PHNOM PENH」 カンボジアクロマーマガジン0号