ホーム 新マガジン記事 悠悠 私のカンボジア: 第二景 「まるでドリームランド」

カンボジアクロマーマガジン2号

「まるでドリームランド」 紙本 岩絵の具  220cm×175cm

 

 初めてのカンボジアから帰国したのち再訪を強く望みましたが、ビザがなかなか下りず、私はまるで報われない片想いをしているようでした。そして5年後の99年にやっと再訪の日が訪れました。

 当時のタ・プロームには絞め殺しの木が生き生きと絡みつき、もう今にも崩れそうで、幻想的な世界が広がっていました。ここは私のお気に入りの場所で、ほとんど毎日のように通い、日が傾く頃までスケッチを描いていました。遺跡内には人影もほとんどなく、一人で静寂の中に座っていると、突然、セキセイインコの群れが鳴き声と共に羽ばたいていき、胸をドキドキさせたものでした。

 そして遺跡を出ると、並んでいる藁ぶき屋根のお土産屋に入って、バイヨンビールを飲むのですが、いつもかわいらしい売り子たちが、毎回私というお客の取り合いを演じ楽しませてくれました。その中の一人、17~18歳ぐらいたったと思いますが、おしゃべりが上手でとても魅力的な女の子がいました。その当時の私が感じた世界観で、その子とお土産を描いたのがこの絵です。アプサラのマリオネットがとても楽し気で、本当に綺麗な情景でした。自然の世界から夢の世界へ。私はいつもここでビールを飲みながら癒されていました。

 翌年、同じ場所に行ったら、その子はそこにはもう居ませんでした。フランス人に気に入られて結婚するために外国へ発ってしまったそうです。その後風の便りで、一年に一回はカンボジアに戻り、幸せな生活をしていると聞きました。もう名前も忘れてしまった昔の話。どうぞいつまでも幸せに…。

 

Scene2: As if in a Dreamland

  In 1999, I visited Ta Prohm every day to sketch until it got dark. After that, I was drinking Bayon Beer and enjoying chatting with the souvenir shop girls. Every time, they fought for a single customer to entertain. There was an attractive girl who spoke well, so this was the work for her. As if in a Dreamland, after a year, she had left there to marry a foreigner. A little bird told me she is living happily.

 

著者紹介

山田 隆量 Yamada Takakazu

日本画家。日本美術院院友。法隆寺金堂壁画模写、名古屋城本丸御殿復元模写などに従事。王立芸術大学/王立プノンペン大学客員教授でYAMADA SCHOOL OF ARTの代表を務める。

A Japanese-style painter, who is a Visiting Professor at The Royal University of Fine Arts.


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