カンボジアクロマーマガジン1号
「眩」 紙本 岩絵の具 220cm×175cm
94年に初めて訪れて以来、カンボジアは私にとって美の宝庫です。
私は当時、愛知県立芸術大学の大きなプロジェクト(法隆寺金堂壁画模写)のメンバーで、故月岡榮貴(日本美術院 同人)先生とスケッチ旅行に来ていました。
初めて見るアンコールワットやバイヨン、タ・プロームなどの迫力のある佇まいには本当に圧倒され、自然の猛威を感じざるをえませんでした。そしてそこには芸術と呼ぶに相応しい世界観がありました。当時、まだ観光客もほとんどいない頃で、遺跡の周りにぎっしりと木が茂っており、それらは発見されてあまり時が経っていない様な雰囲気を漂わせていました。
しかし私を本当に虜にした世界は、そこに住む笑顔の素敵な人々と美しい自然の風景でした。長く伸びたオレンジ色の道、どこまでも続く緑色の地平、人を温かく包むような大きな木。これらは時を止めるほど雄大で、ゆったりとしていました。
ここから私のカンボジアに深くかかわる旅が始まりました。人々の憩いの場所は、大きな木の下で暑くて眩しい光の中 。ここはまるでオアシスのようで、「悠悠」という言葉が何よりぴったりと合う世界。スケッチの後の私に、時を忘れさせ癒してくれた、素敵な場所がそこにありました。
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バックナンバー
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- 第四景「アンコール・ワットの夜明け」 カンボジアクロマーマガジン4号
- 第三景「暮れゆくメコン」 カンボジアクロマーマガジン3号
- 第二景 「まるでドリームランド」 カンボジアクロマーマガジン2号
- 第一景 「眩」 カンボジアクロマーマガジン1号
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