カンボジアクロマーマガジン12号
いつか見た映画のような旅 密林に眠るかつての王都、その周辺に息づく人々に出会う
1日目 午後 コーケー~プノンダエク
雨季近いカンボジアは午後からスコールが降ることが多い。降り出す前に少しでも距離を稼ぎたい。コーケーより東、クーレン村を抜けプレアヴィヒア州・州都トベンミエンチェイへと辿り着いた。昨年度世界遺産となり、新たな紛争の火種となったプレアヴィヒア寺院から、はるか遠いこの州都はどことなく寂れた感がある。
どこかで道を間違えたのだろうか、道路幅がだんだん小さくなり、いつの間にやらただの農道へと入ってしまっていた。とりあえず方向は正しいはずだ。根拠なき自信で無理やり前へ、前へと進んでいくと手作り関所に行く手を阻まれた。「この道を整備したのは自分達だ、だから通行料を払え」。私有地ならともかく、公共道路でのプライベート関所にはどこか納得がいかないが、他の地元民もしぶしぶ払っているようだ。仕方ない、小額の通行料を支払うと、ゲート脇にちょこんと座っていた子供がニカッと笑って手を振った。
西の空から黒雲が流れてきている。ポツリポツリと雨が降り始めた頃、小さな村プノンダエクに宿をとることにした。 速度規制は有って無きがごとし、取り締まる者もいない国道での事故は悲劇を生む
2日目 午前 プノンダエク~サンボープレイクック(コンポントム州)
この時期には珍しく夜間ずっと降り続いていた雨だったが、早朝には上がったようだ。旅行者もほとんどいない小さな村、一軒しかない木造の民宿はトタン屋根で覆われていたため、強弱交えた雨音が、夜間一定のリズムで鳴り響いていたのがまだ耳に残っている。
この村より西部に位置するプリアカン寺院へと向かう予定だ。宿近くの小さな食堂でバーイサッチュルー(焼き豚とご飯セット)を食べながら、道路状態を尋ねてみる。昨晩降り続いた雨の為、途中の道が冠水し、明日にならねばまず通れないという。もちろん、今日雨が降らなければのことだ。明後日の予定を繰り上げ、先にサンボープレイクックへと向かうことにした。
もともといいとは言えなかった道路が、ひどくぬかるみ、人々の生活を一層困難なものに変えている。悪路のため進めなくなった軍用車両が、道路脇に停められている。隣国タイとの緊張状態が続くプレアヴィヒア寺院へと搬送されるのだろう。車両には人目につかぬようにテントを被せられた戦車がどっしりと座り、近くには軍服を身にまとった人々が、むき出しのカシューナッツに噛り付いていた。 赤、黄、緑と三色あるカシューナッツの実。
若干嫌~な臭いを放ち、気になるお味はというと「難」味
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