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カンボジアクロマーマガジン12号

いつか見た映画のような旅 密林に眠るかつての王都、その周辺に息づく人々に出会う

[取材/写真/文]:西村 清志郎(クロマーマガジン編集部)

 

 

 カンボジアで世界に認められた二大世界遺産「アンコールワット」と「プレアヴィヒア」。その両遺跡に隣接するように点在する三つの巨大遺跡群。その立地、アクセスの悪さから訪れる者はまだまだ少ないが、それらの規模、歴史的価値から近い将来、第三、第四の世界遺産として登録されてもおかしくはない。

未来の世界遺産。この国の新しい宝石。そんな遺跡群がこの地にはまだまだ眠っている。ずっと昔、カンボジアに初めて来た時に現地ガイドが目をキラキラさせながら話していた。彼は、彼自身もまだ目にしたことがないというその遺跡群に対し、この国の将来、未来の自分の姿をだぶらせて語気を荒げていたことを思い出し、出発することにした。

1日目 午前 シェムリアップ~ コーケー

 寝苦しいほどの暑さだ。ベッドシーツは寝ている間に流れ落ちた汗でうっすら湿っている。流れ出た水分を補うように、冷蔵庫から取り出した冷たい水を喉の奥へと流し込む。明日からクメール正月だ。ちょうど乾季から雨季へと変わる四月中頃にカンボジアは正月を迎える。その期間は熱帯夜が続き、暑さに強いカンボジア人でもぐったりしていることが多い。ついでに言うと、正月気分と暑さが入り混じり、仕事の効率が一気に落ち込む時でもある。
 GPSの電源を入れ、国道6号線を東へと向かう。正月を明日に控えた国道には多くの乗合タクシーやバンが列をなしている。8シートしかない車内にはその倍以上の人々が詰め乗り、溢れ出た者は屋根の上に座っている。
 なんだろう。人だかりに吸い寄せられるようにバイクの速度を落としていくと、輪の中心には大破した大型トラックが大木にめり込んでいた。集まっている野次馬から話を聞く。全員無事だ。運転手も無事でピンピンしていたそうだが、社長に怒られるのを恐れてどこかに逃げてしまったそうだ。残された同乗者は仕方なく仲間を呼び荷物を移し替えていた。
 アンコールワットとほぼ同時期に建造されたベンメリア寺院。通常の観光客にはほとんど知られていないが、この寺院も他の大型寺院同様に大きな貯水池を持ち、近くには小寺院が点在している。ただし、寺院周辺には未だ地雷が数多く残っており、ガイドなしでの小寺院見学は取り返しのつかない事態となる恐れがある。寺院すぐ近くにはアンコールワット周辺遺跡にも使用された石切り場、東へとまっすぐ伸びる一本道を進むとプリアカンコンポンスヴァイ寺院、北へ向かうとコーケー遺跡群へと繋がっていることから考えると、当時はかなり重要な役割を担っていた地方拠点だったのだろう。

vol12_sub_01-01           ベンメリア東正門。さらに東には特種なナーガがあり大きな貯水池跡が残る

 ベンメリアから北上し赤土の凸凹道を走っていく。勾配の少ないのっぺらな大地。地雷撤去のために焼き払われた灌木のためか、緑が少なくスカスカな茶色空間となっている。アンコールワットよりさらに昔に建造された王都コーケーへと到着した。道路脇には木々に囲まれた背の高い寺院がひょっこり顔を出している。大小様々な寺院を横目に、乾燥した大地をゆっくり駆けていく。ひと際大きな門構え、一番大きな寺院に足を止める。崩壊している中央部を横目に内部へと進む。以前と較べると観光客向けの順路整備、遺跡保護が進んでいるようだ。千年前から放置されていた寺院環濠、長年の草木が堆積し、自然と埋め立てられていたのだが、最近取り去られたようで、流れ込んだ雨水により昔の体をなしていた。
 遠くから聞こえてくる蝉しぐれ、日本のそれとは違い、一定レベルの高音が途切れなく続いている。環濠脇に腰掛け耳を傾けていると、黄色い線香と花を携えた家族連れが歩いてきた。少し大きな一眼カメラを肩から掛けていたからだろう、観光客向けカメラマンと勘違いされたらしく、家族写真を撮ってほしいという。せっかくだからと撮影するが、渡されたメモには聞いたことがない村名と、名前だけが書き込まれていた。

vol12_sub_01-02            速度規制は有って無きがごとし、取り締まる者もいない国道での事故は悲劇を生むvol12_sub_01-03

 

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素敵なカンボジアに出会う小旅行へ―The trip to encounters unknown cambodia