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カンボジアクロマーマガジン12号

いつか見た映画のような旅 密林に眠るかつての王都、その周辺に息づく人々に出会う

[取材/写真/文]:西村 清志郎(クロマーマガジン編集部)

2日目 午後 サンボープレイクック~コンポントム

 グレーの空が、水色へと変化し、青空へと切り変わる。時を同じく、深い濃茶色の大地は、赤く変化し、乾燥した薄いオレンジ色へと変わって空へと舞う。アンタック時代に亡くなってしまったボランティア日本人、中田厚仁さんを讃えて作られた村(通称:アツ村)を抜け、小さな橋を渡るとすぐに、サンボープレイクック寺院群へと到着した。
 点在する高木の隙間からは小さな寺院がいくつも顔をのぞかせている。クロマー売りの女の子たちの案内のもと、だだっ広い遺跡群を散策する。片言の英語を話すプチガイド達は、無理やりクロマーを押し売りしようという気配もなく、鼻唄を口ずさみながらついてくる。アンコール王朝以前の真臘時代に造られた祠堂は崩壊の進んでいるものも多い。全体的にすっきりとしたオレンジ色のレンガで造られ、先のコーケー遺跡群の持つ力強い男性的イメージから較べると、しなやかな女性的な美しさを醸し出している。周壁に護られた三つの寺院群、その一つ一つはまるで三姉妹のようにそれぞれが違った表情を見せていた。
 首都プノンペンと、古都シェムリアップの真ん中に位置するコンポントム。別段目立ったものもない小さな地方都市であり、都市間を結ぶ長距離バスがひっきりなしに行き交う、サービスエリア的な町である。新年を迎えた今日、道路脇に並ぶ屋台や民家には大きな星が飾れている。いつもより華やかな雰囲気の町を歩いていると。正装に身を包んだ人々が列をなして大きな現代寺院へと入っていくのに気づき後を追うことにした。寺院敷地内にはこの日の為に作られた五つの砂山が作られている。初詣に訪れた人々はその山の周りをゆっくりと三周ねり歩くと線香を供えて去っていた。vol12_sub_02-02            五つの砂山は神の住む「須弥山」を模した配置であるこの砂山にも

            伝説が残されている

vol12_sub_02-04           点在するプライベート関所。こんな所にも外国人料金は適用される

 

3日目 午前 コンポントム~大プリアカン

 土嚢のような外周壁が一辺5kmという大きな寺院プリアカンコンポンスヴァイ(通称:大プリアカン)、地元の者にはバカン遺跡とよばれているようだ。一辺5kmといってもその中に点在する遺跡の規模、数は他の遺跡群と較べても多くない。屋台に座っていた子供を道案内に、象を祀る寺院「プラサットドムライ」へと向かうと、お参りに訪れた村人で溢れ、線香の煙に包まれていた。四方を守る象の彫像はオレンジの袈裟に纏われ、中央の寺院には真新しい金象像が奉納されていた。

vol12_sub_03-01           大プリアカンに残るプレアストゥン寺院。この辺りに唯一残る四面仏塔だvol12_sub_03-04           プラサットドムライ(象の寺院)には象像が数多く奉られている(大プリアカン) 

 

 遺跡群の中央寺院へと向かう途中、一基の四面仏塔がポツンと座っていた。何百年も一人ぼっちだったのだろう、どことなく寂しげな彼は行き交う人々を優しく見つめている。到着した中央寺院はひどく破損していた。そのほとんどは内戦後の貧しさから盗掘されたもので、石の切り口は真新しい。特別な機械など使わず力任せに引き倒し、石ノミをあてていったのだろう。女神像や仏陀像の多くは削り取られ、見る影もなくなっていた。
 日の高いうちに悪路を抜けておきたい。タイムリミットはあと少しだ。正月帰省だろう、若い僧たちが荷台に揺られながら楽しそうに話している。途中の小さな村では、老若男女が白いパウダーを顔全体に塗りこみ、新年のダンスを楽しんでいた。vol12_sub_03-02           田舎に正月帰省する僧達。彼らは自分で車両全般(自転車を含む)を

           運転してはいけない決まりがある

vol12_sub_03-03           以前の正月恒例行事に水かけ祭りがあったが、近年禁止され、粉かけ祭りとなった

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