ホーム 過去のマガジン記事 特集: いつか見た映画のような旅 生命の源・トンレサップ湖、その周辺で育まれた信仰、文化、歴史を訪ねる

カンボジアクロマーマガジン11号

いつか見た映画のような旅 生命の源・トンレサップ湖、その周辺で育まれた信仰、文化、歴史を訪ねる

[取材/写真/文]:西村 清志郎(クロマーマガジン編集部)

3日目 午後 ウドン~コンポントム

 カンボジアの古都ウドンより、フェリーに乗ってトンレサップ河を渡る。エンジン音のうるさい古いフェリーには荷篭を担いだ行商人が集まっている。乗り込んでくる人々に、果物やジュース、鶏の丸焼きから、茹でた亀まで売っていた。
 船着場から北上する途中、17世紀にできた仏教寺院「プノンサントーク」に立ち寄ることにした。この寺院も小山の頂上に建造されており、800段を越す険しい階段を上らなければならない。まっすぐ伸びた階段には盲目の老女達や、伝統楽器を奏でる老人たちが、訪れる観光客からの恵みを乞っていた。やっとの思いで辿り着いた山頂寺院内には水槽があり、その中には水に浮く12キロの石が奉られていた。この山に訪れる人々の多くはその不思議な石に祈りを捧げ、願いを込める。単純に考えると軽石なのであるが、この国には存在しない石であるため、その不思議な石には精霊が宿っており、人々の願いを叶える力があると信じられている。寺院周辺を散策すると、17世紀頃に彫られた涅槃像や、座仏像が多数点在し、コロニアル時代の西洋人兵士のペインティングも残されていた。vol11_sub_03-02           ベトナム系住民の多い水上村コンポンロン。この辺りには水上教会や水上中国寺院もあるvol11_sub_03-03           サントーク寺院内には不思議な石があり、人々の願いを叶えるという 

3日目 夜 コンポントム~シェムリアップ

 この国の夜間走行は危険だ。日本のように街灯がない真っ暗な道、対向車が来るとライトを下げるといった交通マナーも育ってなく、反射板やライトのない自転車が暗闇の中を走っている。その中でも一番危ないのが夜間でも活動している放し飼いの牛である。彼らは夜間でものうのうと車道を横切るうえ、クラクション音も気にもとめないのだ。
 何となく久しぶりに感じるシェムリアップだが、感慨に耽る暇もない。深夜に地元高僧の火葬式が行われる聞き、少し覗いてみることにした。僧達にも階層があり、高位の僧は逝去してから三年程は寺院に安置される。厳かな葬儀をイメージしながら到着した祭儀場には、多くの屋台が並んでおり、人々が風船割りや、ショッピングを楽しんでいる。すぐ横には移動式の観覧車やメリーゴーランドが設置され、子供達はぐしゃぐしゃになった紙幣を握りしめ、自分の番を待ちわびている。突然始まった花火を合図に、中央に設置されていた高僧の眠る棺に火が点された。燃え続ける棺を中心に、宴は深夜まで続けられた後、人々はそれぞれの生活へと戻っていった。vol11_sub_03-01           高僧を偲ぶ火葬式は盛大に行われる。集まる人々にとってはただの火葬パーティーである  

 

(註1)  1965年フランス人により発見された紀元前6800年頃の遺跡。以後の発掘調査により5つの時代、文化が確認され、数千年の間この地に人々が暮らしていたことが分かっている。
(註2) サムロンセンはトンレサップ湖東南の湖岸にある人口1000人ほどの小さな村。紀元前1500年頃の人骨、住居跡、貝類、土器などが発見されている。

 

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