カンボジアクロマーマガジン34号
教えて!クロマーじいさん カンボジア州名トリビア
※19のコンポンチャム州(Kompong Cham)は2013年12月に2分割され、現在州北部はトボーンクモム州(Tbong Khmum)となりました。しかし当企画ではトボーンクモム州が外れており、読者および関係者の方々に大変なご迷惑をお掛けしました。ここに訂正するとともに、深くお詫び申し上げます。
●北西部
1、失くしてしまった大切なものとは バッタンバン州
2、超可愛いあの動物にまつわる話 パイリン州
3、時を越えて取り戻したクメールの魂 シェムリアップ州
4、タイとカンボジアの戦いの歴史 バンテアイミンチェイ州
5、タイとカンボジアの戦いの歴史2 ウドーミンチェイ州
6、2008年登録の世界遺産 プレアヴィヒィア州
1.バッタンバン州 Battambang
国内最大を誇る稲作地帯
昔、クロニュオンという牛飼いが、牛を思い通りに操ることが出来る魔法の棒を拾う。クロニュオンは牛飼いの仕事に退屈していたので、その棒を使って当時の王を倒し、一国の王となった。しかし彼は即位から7年後、前王の息子と戦うこととなる。その時クロニュオンは魔法の棒を前王の息子投げつけたが、避けられて無くなってしまい戦いに敗れた。その棒が無くなった地が同州だったことから、バッタンバン「棒を失くした場所」と呼ばれるようになったという、カンボジアの伝説に因んだ州名である。
面積 117,022km²
人口 1,098,957人
見所 プレックトアール鳥獣保護区
11~1月に無数の渡り鳥が飛来するバードウォッチングスポット
名物 プカー・ロムドゥル
「木蓮の花」の意を持つ香米が特に有名で、高値で取引される
2.パイリン州 Pailin
宝石眠るタイ国境の山村
19世紀頃、この辺りは深い森に覆われており、多くの動物が住んでいた。ある日この森に狩人がやってきて、水場で遊ぶ2匹のカワウソを見つけた。カワウソは狩人を見ると一目散に逃げていってしまったが、カワウソが遊んでいた場所に光る石が残されていた。狩人はこれを持ち帰り、タイ人の商人に見せた所、それが大変高価な宝石であることが判明する。狩人が再び宝石を採りにいく際、「パイリン(カワウソの遊び場)に行ってくる」と言ったことから、この地がこう呼ばれるようになった。
面積 803km²
人口 66,436人
見所 宝石採掘体験
タイとの国境付近にある川で、小粒ながら宝石の原石を拾うことができる
名物 宝石
濃い深みのあるブルーサファイアと、深紅のパイリンルビー
3.シェムリアップ州 Siem Reap
世界に誇るアンコールの都
かつてクメール王朝の中心として栄えたシェムリアップだが、この州名は比較的新しいものである。15世紀、アンコールトムがシャムによって落とされると、この地域はシャム領となり、サイアムノーコー(タイ語でシャムの都市)と呼ばれた。その後20世紀初頭にシャムから仏領カンボジアにこの地が返還され、返還された地域は2州に分割されて、それぞれバッタンバン州とシェムリアップ州と命名された。このシェムリアップという名前は「シャムを倒した地」を意味し、カンボジアとシャムとの戦いの歴史を現したものとなっている。
面積 10,299km²
人口 989,216人
見所 アンコール遺跡
アンコールワットを中心としたクメール王朝時代の遺跡群
名物 サイックロ
ねっとりとした濃厚な味わいの干したカンボジア版豚肉ソーセージ
4.バンテアイミンチェイ州 Banteay Meanchey
タイと隣り合わせの交易地域
仏植民地時代にシャムから返還されたバッタンバン州のうち北部地域を1988年に分割し、新しい州としてバンテアイミンチェイと命名した。この言葉は、クメール語とパーリ語を組み合わせた造語で「勝利の砦」という意味である。クメール王朝時代、同州にはバンテアイチュマール(猫の砦)やバンテアイトープ(兵士の砦)などの要塞が建てられ、前線基地として度々シャムとの戦場となった。その後も、仏植民地時代、第2次大戦にも度々シャムと領有権を争ったことから、その戦いの歴史をこめて、「勝利の砦」と名付けられたといわれている。
面積 6,679km²
人口 719,640人
見所 カジノ
タイとの国境、ポイペトにあるカジノは連日タイからの観光客で賑わっている
名物 クロラン
ココナッツともち米、豆を一緒に竹筒に入れて炊いた赤飯に似たおこわ
5.ウドーミンチェイ州 Oddar Meanchey
鬱蒼とした森に覆われる未開の地
1966年にシェムリアップ州から独立し、現在の州名「ウドーミンチェイ」が命名された。パーリ語とクメール語を組み合わせた造語で「北西の勝利」という意味である。この地域はバンテアイミンチェイ州と同様、度々シャムと領有権争いとなった歴史がある。第2次大戦後、カンボジア北西部はタイ(シャムから改名)が領有を主張したが、フランスがタイの国連入りに対し拒否権を行使しようとしたため、1946年に仏領に返還されている。ウドーミンチェイは、シェムリアップ、バンテアイミンチェイと並んでシャムとの係争の歴史を物語った地名である。
面積 6,158 km²
人口 216,676人
見所 アンロンベン歴史観光エリア
ポルポトの墓やタモクの家など、クメール・ルージュの史跡が残る
名物 南洋材の家具
紫檀などの高級木材を使った家具だが、違法伐採によるものも多い
6.プレアヴィヒア州 Preah Vihear
カンボジア第2の世界遺産
プレアヴィヒアとは「聖なる本堂」という意味で、同州にある寺院遺跡の名前である。同州もまたクメール王朝が滅んだ後、長きに渡りシャム領となった。その後、20世紀初頭にフランスとシャム間の協定で山脈の稜線に沿って国境が引かれ、仏領に帰属したが、その際にプレアヴィヒア寺院周辺の国境の線引きが曖昧であったことから、今日に至るまで遺跡をめぐる領土紛争が度々発生している。同州がプレアヴィヒア寺院の名をとって命名されたのは1964年。タイ領の実効支配下となっていた寺院が、国際司法裁判所の判決でカンボジアに返還された時であった。
面積 13,788 km²
人口 213,239人
見所 プレアヴィヒア寺院
タイ国境の山岳地帯にあるクメール遺跡で、2009年に世界遺産認定された
名物 野生動物の肉
鹿や猪などの焼肉。しかし野生動物の捕獲は法律で禁止されている