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カンボジアクロマーマガジン34号

教えて!クロマーじいさん カンボジア州名トリビア

[文・イラスト] 多賀 史文  [制作] 安原 知佳

●北東部

19、18世紀に滅亡したチャンパの末えい  コンポンチャム州
20、信仰心の厚い大蛇の伝説  コンポントム州
21、数多くの逸話が残る謎の州名  クラチェ州
22、メコン川水系最大級の合流地点  ストゥントレン州
23、山岳民族たちの住まう土地  モンドルキリ州
24、絶対欲しい!アレの採れる山  ラタナキリ州

 

 

19.コンポンチャム州  Kampong Cham
豊かな土壌を湛えた一大農業地帯

アンコール遺跡群にも数々の彫刻が残されるチャンパ王国の民。その起源は紀元前1世紀頃にインドシナ半島に移り住んだマレー・インドネシア系海洋民族で、2世紀頃からベトナム中部の沿岸部にてヒンドゥー教、13世紀頃からはイスラム教の影響を受けた文明国家を築いた。その後チャンパは18世紀ごろにはベトナムのグエン朝に滅ぼされるが、そのチャンパ王国の民の末裔であるチャム族の多くがカンボジアに移住し少数民族として今も暮らしている。中でもコンポンチャム州にはチャム族が多く定住しているため、州名も「チャム族の港」と命名された。

f1-34-19Kampong-Cham

面積 9,799km²
人口 1,891,406人
見所 ノーコーバチェイ遺跡
12世紀のクメール遺跡。遺跡内には現代遺跡も建立されている
名物 カシューナッツ
州内の特産品で、新鮮なものを炒ると香り豊かでとても美味しい

 

20.コンポントム州  Kampong Thom
観光開発が進む古代遺跡の地

コンポントムは、古くはコンポンポットムという名前であった。この地名は、同州に伝わる伝説に由来している。大昔、今のコンポントム市を流れるストゥンサエン川の上流に大きな池があり、その近くの洞窟に2匹の大蛇が住んでいた。この2匹の大蛇はカンボジアの暦で定められた仏教の日になると、街へ現れて人々と共に祈りをささげたという。このため人々はこの地域をコンポンポットム「大蛇の港」と呼ぶようになったが、いつしか大蛇が現れなくなり、蛇という言葉が省略されてコンポントム「大きな港」となった。

f1-34-20Kampong-Thom

面積 13,814km²
人口 727,719人
見所 サンボー・プレイ・クック遺跡群
7世紀初頭、真臘時代の首都として建造された寺院群
名物 昆虫食
昆虫の素揚げや佃煮、中でも「お化けコオロギ」という巨大コオロギが有名

 

21.クラチェ州  Kratie
メコン川流域の長閑な村落

クラチェの州名の由来には諸説ある。一般的に知られているものは、モンドルキリを中心に居住しているカンボジアの山岳民族プノン族の言葉で「水牛の港」という意味であるという説だ。これは現在の州都にプノン族が畜産した水牛を売買する市場があり、メコン川の西岸に水牛を運ぶ渡し舟の港あったという故事に由来しているというものである。その他に知られている説として、昔の女性が化粧に使ったクロックチェーという粉の木の名前や、少数民族を指してクメール語でクロー・チェへ「知識の乏しい者」という言葉だという説もある。

f1-34-21Kratie

面積 11,094 km²
人口 353,192人
見所 イルカウォッチング
クラチェ周辺のメコン川には河イルカが生息しており、観光客で賑わう
名物 イルカグッズ
木彫りのイルカの置物やキーホルダーがお土産に人気

 

22.ストゥントレン州  Stung Treng
大河が合流する静かな景勝地

周りを山に囲まれた地形になっており、ベトナム中部を源流としラタナキリ州を経由して流れてくるセン川とスレポック川、ラオスから流れてくるコン川、といったメコン川流域最大の支流水系の合流地域である。このため州都のストゥントレン周辺は細かな小川が沢山あり、そこに葦が多く自生している事からストゥントレン「葦の小川」と呼ばれるようになったといわれている。カンボジアではこの葦を採集して編み、ゴザや簾、漁具、鞄などを作ったり、束ねてほうきにしたりして利用している。

f1-34-22Stung-Treng

面積 11,092  km²
人口 129,974人
見所 オルセーカンダール森林公園
観光省が開発しているエコツーリズムスポット
名物 パーシーイー
同州でしか採れないコイ科の高級魚。州都のモニュメントにもなっている

 

23.モンドルキリ州  Mondulkiri
大河が合流する静かな景勝地

モンドルキリとは「山の集まる場所」と言う意味で、これは同州が標高800メートルほどの山々が連なる山岳地帯であることに起因していると言われている。モンドルキリ州の全人口の8割が少数民族から構成されており、中でも最大部族のプノン族が有名である。一方で、同州の州名に纏わるもう一つの説が、マンダラキリという言葉が訛ったものであるという説だ。マンダラキリはアンコール遺跡にも刻まれている、神々と阿修羅が協力して不老不死の薬を作るというインド神話「乳海攪拌」に登場するマンダラ山のことである。

f1-34-23Mondulkiri

面積 11,092 km²
人口 129,974人
見所 少数民族の村落巡り
山岳民族のプノン族や、象使い民族のプータン族などの集落が人気
名物 スラーピエン
プノン族の作る甕入りの地酒で、水を加えてストローで吸って飲む

 

24.ラタナキリ州  Ratanakiri
手つかずの自然が残る辺境の地

ラタナキリとは「宝石山」という意味で、1959年にストゥントレン州から独立した際に命名された。この地域は古くから宝石の産地として知られ、中でもラタナキリブルーと呼ばれる青色の天然ジルコンは、ダイアモンドに次ぐ高屈折度の宝石として世界的にも有名である。現在も宝石鉱山が稼動しており、井戸から汲み上げた土からラタナキリブルーの原石を採取している。同州の全人口における少数民族の割合はカンボジアの中でも最も多く、主要な民族はタンプーン族、ジャライ族、クルン族で、クメール人はわずか1割強にしか満たず、クメール語もあまり通じない。

f1-34-24Ratanakiri

面積 10,782km²
人口 158,162人
見所 ヤクロム湖
4,000年前の火山活動で誕生したカルデラ湖。少数民族タンプーン族の聖地
名物 ラタナキリブルー(ジルコン)
エナメルブルーに輝く天然石や、装飾品など

少数民族の村落巡り:山岳民族のプノン族や、象使い民族のプータン族などの集落が人気

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