カンボジアクロマーマガジン35号
カンボジア経済
25回目:中国支援の発電所が続々 電力需給は一息
鈴木 博(すずき ひろし)
2013年5月22日の午後にプノンペンの大部分が停電する事態となりました。この日だけでなく、2013年の乾季は、電力不足による計画停電も実施され、NGOの集計によりますと停電回数は700回に及んだとされています。
2013年後半から2014年にかけて、建設中だった発電所や送電線が続々完成し、カンボジア、特にプノンペンの電力需給は改善に向かっています。
2013年には、マレーシア系企業によりシアヌークビル(スタンハウ経済特区)に石炭火力発電所(100MW)が完成しました。カンボジアにとっては初の石炭火力発電所となります。更に2014年6月2日、総合商社の丸紅はカンボジアで電力事業に参入すると発表しました。上記のマレーシア系持株会社の株式20%を取得することで合意し、株式売買契約を締結したとのことです。取得額は40億円程度とみられます。丸紅は発電所の効率向上やコスト削減などの運営を支援するほか、送電線や変電所の増設投資を進めていく方針とのことです。
次に中国がカンボジア西部のコッコン州で建設してきたローワー・ストゥン・ロッセイ・チュラム発電所(338MW)が完成し、2013年12月から試験運転を開始しました。期間35年のBOT方式(建設・運営を中国華電公司(China Huadien Corporation)が行い、35年後にカンボジア政府に譲渡する方式)です。総工費は4億9500万ドル(約540億円)です。 2014年3月27日には、プルサット州で中国が支援したストゥン・アタイ水力発電所(120MW)の完成式典が開催されました。期間34年のBOT方式(中国大唐集団)で、総コストは発電所が2億5500万ドル(約278億円)、送電線が1億1300万ドル(約123億円)です。
また、2014年8月13日に、中国重型機械(China National Heavy Machinery Corporation:CHMC)が建設してきた南西部コッコン州のストゥン・タタイ水力発電所(246MW)が試験運転を開始しました。期間40年のBOT方式で、5億4000 万ドル(約590億円)を投じて建設されました。
このように、大停電の後、約1年3カ月の間に総出力804MWの発電容量が追加されました。カンボジアのピーク需要は、2012年時点で563MWであり、電力需給は一息つくものと見られます。しかし、カンボジアで中国が開発してきた水力発電所は、発電容量はあるものの、ダム・貯水池が小さく乾季には大幅に発電量が減少します。また、非公表ながら、売電単価が相当に高いと言われており、カンボジアの電力料金低減は、当面期待できない状況です。
今後は、雨季・乾季に関係なく発電が可能な石炭火力発電所(135MW×2)がシアヌークビル近郊に2015年に完成の予定です。また、電力料金の安いラオスから電力を輸入するため、ラオスからストゥン・トゥレン、クラチエ、コンポンチャムを経由してプノンペンを結ぶ送電線(230KV)の建設も順次行われる予定で2016年の完成を目指しています。
こうした中で日本政府・日系企業では、環境にやさしい発電への取り組みを行っています。籾殻を使ったバイオマス発電環境システムや太陽光発電システム等です。日本の先進技術がカンボジアでも活用されていくこととなり、今後の広がりも大いに期待されます。
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