ホーム 過去のマガジン記事 カンボジア経済: 21回目:カンボジア証券取引所に民間企業がついに上場へ

カンボジアクロマーマガジン31号

 

カンボジア証券取引所は、2011年7月に開設されました。その後2012年4月にプノンペン上水道公社が初めて上場しましたが、2社目の上場がなかなか実現しませんでした。カンボジア政府としては、政府系のシアヌークビル港湾公社と通信公社であるテレコム・カンボジアの上場を目指していますが、手続きが遅れており上場には至っていません。この間、プノンペン上水道公社の株式の取引量も限られ、株価もあまり動かない日が続いてきました。この低迷を脱するためには、民間企業の上場を進めて、株式市場を活性化することが必用との声が高まっています。このような状況の中で、民間企業の中から証券市場への上場を目指す企業が出てきました。

 

2社目となる予定の企業は、Grand Twins International (Cambodia) Plc.で、アディダス製品等を製造する台湾系の縫製企業です。同社は、新株を発行、新規株式公開(IPO)の手続きを経て、カンボジア証券取引所に上場するとしています。同社は、2013年3月の上場を目指していましたが、準備の遅れに加えて、総選挙とその後の政治状況もあり、IPOのタイミングを計っていました。1月16日にカンボジア証券取引委員会が同社のIPOについて仮認可を発出しました。

上場を予定しているグランドツイン社の縫製工場。多くの女工さんたちが一生懸命働いている。

上場を予定しているグランドツイン社の縫製工場。多くの女工さんたちが一生懸命働いている。

 

この記事を皆さんが読まれるときには既にIPO手続き始まっている可能性もありますが、IPOの最初となるロードショー(説明会)が2月にも実施される予定です。その後ブックビルディング入札が開始され、入札締め切り後にIPO価格が決定されます。この価格での購入申込期間は約1週間で、申込み期間終了後に申し込んだ方々への配分が決定・通知されます。申し込みが多い場合には比例配分となります。配分後約1週間でカンボジア証券取引所に上場される予定です。IPO主幹事は台湾系の証券会社であるプノンペン証券です。また、日系のSBIロイヤル証券もIPOの販売代理店となっています。

 Grand Twins International (Cambodia) Plc.社の工場は、プノンペン空港近くの国道4号線から少し入ったところにあります。5700名の従業員が働く巨大縫製工場で、海外の有名ブランドの製品を大量に製造し、全量輸出しています。主なブランドはアディダスで全体の8割以上を占め、スポーツウェアが主要な製品となっています。ヨーロッパ向けと、アメリカ向けが主な輸出先とのことです。また、今後は日本等の新しい輸出先にも力を入れたいとしています。工場では毎月65万着程度を生産しています。工場内は、見渡す限りミシンが並び、女工さんたちが一生懸命に働いています。

 カンボジアの主要産業の一つである縫製業の民間企業が証券取引所に上場することは、カンボジア経済全体にとっても好ましいことです。民間企業の上場が増えることによって、カンボジアの株式市場の活性化が図られることが期待されます。

 ※カンボジア証券市場への投資には、カントリーリスク等の様々なリスクがあります。投資にあたっては、十分な検討の上でご判断ください。この記事は情報提供のみを目的としており、投資勧誘を目的としたものではありません。

 


鈴木 博(すずき ひろし)

2010年にカンボジア総合研究所を設立。
2007年からカンボジアに住んでいます。
ブログ「カンボジア経済」もご覧ください。
ブログ: http://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh

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