カンボジアクロマーマガジン40号
カンボジアの魅力って何だろう。最大の観光地、アンコールワットの遺跡群は世界的に有名で、世界中から旅人が訪れる。カジノに行ってみたいからプノンペンに滞在、という射幸的な向きもある。
しかし実は、この国の魅力は田舎町にある。豊饒なメコン流域と、そこに住む人びとの暮らし。東部カンボジアのジャングルの静寂。シャム湾に面した港町と海風の吹く浜で過ごす数日。カンボジアはバス路線が充実していることもあり、街を離れれば、心のむくままに小旅行ができることが、この小さな国の一番の恩恵ではなかろうか。
僕は、山でも海でも、自分の好きなところに辿りついたら、まずは市場を訪れる。クメールの昔ながらの市場は、20世紀の雰囲気を色濃く残しているものだ。破れトタンの屋根の下、木の縁台にハスの葉を幾枚か敷き、野菜や雑多な魚が売られている。
こうした市場の環境は、昔の日本人には受けなかった。戦後の貧しさを必死に忘れようとした昭和の日本人には、一見貧しさを感じさせる市場の風景が魅力ではなかったのだろう。
しかし、地元で獲れた魚や野菜を市場で売り、食べ、満足し、暗くなれば寝る。その生活は貧しさなどは少しもない、芳醇な世界である。
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バックナンバー
- Vol.3 香気あるクメールの米 カンボジアクロマーマガジン44号
- Vol.2 黄昏どきの小さな魚市場 カンボジアクロマーマガジン42号
- Vol.1 トタン屋根とパラソルの下で。 カンボジアクロマーマガジン40号