まだ見ぬカンボジアに出会う小旅行へ―現地発カルチャー&旅行情報誌「クロマーマガジン」

　人類が永々と築いてきた文化の一つに美術があります。美術は表現を通して、子ども時代に生きている世界をよく観、気づき、感じ、考え、自ら表現して、生きている世界の理解を深めることかと思います。カンボジアでは教育科目に美術がありませんので、残念ながら、多くの子どもたちは表現を通してその経験をすることが難しい状況です。当美術スクールは、おかげさまで、現在6人のカンボジア人美術講師が育ち、「条件悪く生まれた子どもたちが心豊かに生きられるように」と後に続く子どもたちの美術授業に取り組んでおります。

今回ご紹介するチーウ・ヒーアは、2008年の開校時より17年間、通訳として活動しております。子どもたちの心が楽しくなるよう、時にはユーモアを交え、子どもたちの創造力を高める通訳をしている中で、自身の創作意欲が芽生え、2013年から独自の表現方法で絵を描き始めました。ヒーアの作品は、国や年齢を問わず、見る人の心に深く、温かい印象を与えています。

笠原知子

　美術授業の通訳をしながら、子どもたちが自由に、思いのままに描いている姿に表現する楽しさや喜びを感じ、絵を描き始めました。6歳からお寺や養護施設での生活で、家庭を知らずに育ち、また、小さい時にカンボジア内戦で逃げ惑った経験から、「家族愛、平和、生きる喜び」を表現しています。これからも、子どもたちの未来の扉が少しでも広がるよう、この無料の美術スクール活動を続けて参りたいと思います。

チーウ・ヒーア