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カンボジアクロマーマガジンPP9号

特集 救急車がつなぐ命 カンボジア救急車の歴史

[写真・文]

特集 救急車がつなぐ命 ~カンボジア救急車の歴史~

1.国立病院の日本の救急車

カンボジアの救急車と聞くと、何が思い浮かぶでしょう。

中には、プノンペンで日本の救急車を見た、懐かしいサイレンを聞いた、という人もいるでしょう。
カンボジアには119やSAMUと表示された救急車もあります。カンボジアの救急車の歴史と現状など、ご紹介します。

1960年代~

カンボジア国内の動画には、病院や救急車、製薬や医大の授業風景など、同国が医療分野で発
展していく様子がありました。しかし、1970年頃からカンボジアは戦乱と国内混乱が続き、特にポ
ル・ポト政権時代には従来の社会体制の廃止、知識や教養を持った人々その他の大量処刑などに
より、同国の医療も完全に崩壊したのです。

1993年代~

新政権が樹立した頃から国際赤十字などが救急医療支援に乗り出し、97 年 からフランス赤十字と協働でプノンペンを中心に二つの国立病院で救急車による傷病者搬送を開始しました。
車両は SAMU(仏語の「救急支援サービス」の頭文字)救急車と呼ばれました。

2.赤十字が運営していた救急車

 

2000年代~

2000年に日本政府はフランス赤十字の要請を受けてODA事業「プノンペン市救急車供与計
画」を実施しました。3年後、保健省は赤十字の救急車を保健省の管轄としました。

実は民間でも救急車の寄贈は始まっていました。
NPO法人サイド・バイ・サイド・インターナショナル(SBSI)は、1999年に当時24時間無料診療を実施し
ていた慈善病院シアヌーク病院に救急車を2台、2000年にアンコール小児病院に1台救急車を寄贈しています。同団体は以降、公立病院を中心に緊急車両や医療機器の寄贈を続けています。

3.トックトックで運ばれた患者

昔従事した医療者によれ ば、2004年に救急搬送の番号が119番に設定されました。
日本と同じです。

それ以降も公立と民間病院の両方で救急車の運用が増えていきました。が、民間救急車の中には利益
目的にただ患者を運ぶだけで貧しい負傷者は置き去りにしたり、病院に搬送後に高額の搬送料を請求し
たりする悪徳救急車も増えました。日本のテレビ局が取材に来たこともあります。

しかし、日本などの訓練を受けた救急隊が実際に搬送する姿を見聞きして、救急車は金儲けの道具で
はなく、人命を救うためにあるというメッセージが伝わりました。

2008年、保健省は民間救急車の運用を患者搬送のみとし、交通事故搬送などを禁止しました。また首
都の公立救急医療機関を中心とした統一119番ネットワークシステムと119番コールセンター(カルメット
病院内)を設立し、今も存続しています。原則として交通事故の119番システムの救急車搬送は無料です。

4.国立病院の救急隊と救急車(2010年)

5.国立病院の119番コールセンター

 

2010年代~

2010年の水祭り中に、橋で群衆が将棋倒しになり、350人が死亡、大勢が負傷した惨事でも、一晩
中、救急車が搬送を続け、救急車の重要性が明らかとなりました。

6.シアヌークビルのビル倒壊現場(2019年)

 

2020年以降

コロナ禍には日本政府が救急車を100台、また国連や諸外国からも救急車が寄贈されています。
昔はぼったくりを恐れて救急搬送を拒否して血まみれで去る負傷者もいましたが、今は救急車を呼
ぶことは国民にすっかり浸透しました。

7.日本政府がコロナ対策支援の救急車を寄贈(2021年)

ただカンボジアの救急医療システムは、大きな課題を抱えています。都市部の急発展により交通事故
は急増し、対応が遅れることもあります。救急車がまだ不足している地域もあります。搬送先の医療機
関も緊急対応である必要があります。119番も無料のため不要な電話も多く、つながりにくい時もあり
ます。

また、重要課題である救急従事者の人材育成、機材の強化、効率的な救急システムの構築を目指し
て、保健省は改革を進めています。JICAも救急医療の人材育成体制強化事業などを継続しています。

カンボジアの救急医療は難題山積ですが、時間がかかっても向上し続けることでしょう。救急医療だ
けでなく、カンボジアの医療全体も。

8.日本の救急車とチアン・ラー保健大臣

【追加情報】 2024年、日本から寄贈された5台の救急車はカンボジアでこのように美しい装飾がさ
れて、海岸地域のシアヌークビル州とカンポット州に配置されました。

9.海岸地帯2州に配置された日本の救急車

 

NPO法人サイド・バイ・サイド・インターナショナル(SBSI)

カンボジア事務所 所長 佐々木明子
初カンボジア2006年。在住11年目。
救いたい命があるから!をモットーに活動。
Future Focus Solutions &Pharma Co., LTD Public Safety Managerも兼任。

Facebook:SBSI.NGO

Web:https://side-by-side-intl.oWeb

Mail:sasaki-a@side-by-side-intl.org


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