ホーム 新マガジン記事 カンボジア建築紀行: 【カンボジア 建築紀行】動きの建築——百の住宅―伝統に寄り添う暮らしの創造

カンボジアクロマーマガジンPP16号

カンボジアのモダニズム建築を日本人建築士の視点から紹介する本企画。第5回は、1965年にヴァン・モリヴァンが設計した「国立銀行職員宿舎(百の住宅)」を取り上げます。プノンペン郊外に建てられたこの集合住宅は、中央銀行職員のための公営住宅であり、国家の近代化とともに住まいの在り方を再定義しようとした試みでした。

基盤となったのは、カンボジアの伝統的な高床式住居。1階はピロティ空間であり、通風と日陰を確保。2階に居間・寝室・水回りを配し、それらを外部テラスでつなぐ構成です。内外が緩やかにつながる設計は、クメール文化の「開かれた住まい方」を継承しつつ、コンクリート構造による耐久性と機能性も備えていました。

また、従来より開口部を大きくとり、光と風を効果的に取り入れる工夫も施され、熱帯気候への対応が図られています。伝統と近代の融合を象徴する建築といえるでしょう。

現在、現地では共通の骨格の上に住まい手によって改築・建て替えが進み、暮らしぶりや価値観がにじむ多様な景観が生まれています。中には屋根だけを残し、周囲がほとんど改築されている事例もありました。保存という視点からは課題も抱える一方で、「設計の余白」が人々の暮らしによって柔軟に埋められていく様子は、今もなお進行中の都市の営みを感じさせます。

画一性と多様性、設計の余白と暮らしの創造。百の住宅は、現代にも通じる住まいの本質を問いかける建築遺産です。

一級建築士 尾形雄樹

株式会社翔設計 プノンペン支店

社会ニーズの高度化・多様化に対応する建築総合コンサルティング企業です。建築・構造・設備の専門技術を活かし、新築・リノベ・FM・PMCなど多様な段階・手段で建物の課題を包括的に解決。
プノンペンを海外拠点とし、グローバルに事業を展開。

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