ホーム 新マガジン記事 カンボジア建築紀行: 【カンボジア 建築紀行】建築に宿る哲学—モリヴァンの自邸から学ぶ空間の豊かさ

カンボジアクロマーマガジンPP14号

カンボジアのモダニズム建築を日本人建築士の視点から紹介する本企画。第3回はヴァン・モリヴァンが自らのために設計した住宅「モリヴァン自邸」(1966年竣工)を紹介します。

 現在は「BROWN COFFEE(Mao Tse Toung店)」として活用され、日常の中に建築の魅力が静かに息づいています。

この建物はかつて1階を建築設計事務所、2・3階を住居として用いていた複合用途の自邸です。敷地に対して45度振られて配置され、余白に生まれた三角形のスペースがバルコニーとして活かされています。中央に階段室を据え、そこから空間が四方へと開かれます。屋根は2つの放物線が交差する複雑な形状で、軽やかさと力強さを併せ持ちます。

1階の北側を除く三方向には、日射遮蔽のための斜めのコンクリート壁が設けられ、環境への配慮が見て取れます。バルコニーの手摺が排水経路を兼ねるなど、意匠と機能の融合も随所に見られます。2階の一角にはモリヴァンによる建築模型や図面が展示されており、自邸に込められた思想や活動を垣間見ることができます。

内部にはレベル差と複数の階段が巧みに設けられ、限られた面積ながら視線や動きに変化が生まれ、豊かな空間体験が広がります。分節と連続が共存する構成が、住まいに静かなダイナミズムをもたらしています。

かつての個人住宅が、今では誰もが訪れるカフェとして開かれていることも魅力の一部です。名建築に触れながら過ごす時間は、モリヴァンの設計哲学が今も生きていることを静かに物語ります。

一級建築士 尾形雄樹

株式会社翔設計 プノンペン支店

社会ニーズの高度化・多様化に対応する建築総合コンサルティング企業です。建築・構造・設備の専門技術を活かし、新築・リノベ・FM・PMCなど多様な段階・手段で建物の課題を包括的に解決。
プノンペンを海外拠点とし、グローバルに事業を展開。

電話:096-431-0207

時間:8:30-17:30

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