ホーム 新マガジン記事 カンボジア建築紀行: 【カンボジア 建築紀行】知っているようで知らないヴァン・モリヴァン 独立記念塔

カンボジアクロマーマガジンPP12号

知っているようで知らないヴァン・モリヴァン 独立記念塔 ─ 夜に浮かび上がる「祈り」のかたち

 

カンボジアに息づくモダニズム建築の魅力を、日本人建築士の視点から紹介する本企画。
第1回は、首都プノンペンの象徴「独立記念塔(Independence Monument)」です。

1958年に建てられたこの塔は、カンボジアがフランスから独立を果たした1953年を記念する国家的モニュメントで、高さは37メートル。設計を手がけたのは、カンボジア近代建築の巨匠ヴァン・モリヴァン。フランスで建築を学び、帰国後に「ニュークメール・アーキテクチャー」を提唱し、伝統とモダニズムの融合を目指しました。

塔のフォルムには、アンコール建築の意匠が色濃く反映されています。蓮の花を模した仏塔形状を縁取る繊細な彫刻は、バンテアイ・スレイ遺跡の装飾を参考にしており、古典美と現代建築が調和する意匠となっています。また、全体の寸法やバランスにはル・コルビュジエの「モデュロール」理論が応用され、理知的な美が宿ります。

とりわけ印象的なのが夜間のライトアップ。階段状の断面構成と雁行状の平面構成が、光と影を生み出す劇的な舞台装置となり、装飾が下部から照らされることで、構造美をなぞるような立体的なシルエットが浮かび上がります。

昼の重厚さと、夜の幻想。通りかかった際はぜひ足を止めて、その祈りのかたちに静かに向き合ってみてください。

一級建築士 尾形雄樹

 

株式会社翔設計 プノンペン支店

社会ニーズの高度化・多様化に対応する建築総合コンサルティング企業です。建築・構造・設備の専門技術を活かし、新築・リノベ・FM・PMCなど多様な段階・手段で建物の課題を包括的に解決。
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