カンボジアクロマーマガジン0号
特集:世界で響くカンボジアの音楽
特集 世界で響くカンボジアの音楽
寄稿:山内彩椰
一度訪れると、また行きたくなるカンボジア。
同じように一度聴くと、また聴きたくなるカンボジアの音楽に魅せられるミュージシャンは世界各国にいます。
そんなミュージシャンをご紹介します。
Dengue Fever
2001年から、アメリカ・ロサンゼルスを拠点に活動しているロックバンド。カンボジアの1960、70年代のサイケデリックロックの曲をアレンジして、世界にカンボジアのロックを響かせた先駆者たち。
2010年には、カンボジア・アメリカ国交60周年を記念し、プノンペンでフリーコンサートを行った。
その後も、アメリカ大使館主催で、数回シェムリアップとプノンペンでコンサートを行っている。
2023年9月にニューアルバム「Ting Mong」を発売。
静岡出身の日本人アーティスト、逆柱いみりによるインパクトあるジャケットが起用されている。 |
Cambodian Space Project
2011年にデビュー。当時、プノンペンに住んでいたオーストラリア人ギタリストJulienやフランス人、そしてカンボジア人のミュージシャンで結成された。
2018年にボーカルのChannthyが事故で亡くなってしまってからは、Julienがカンボジア人ミュージシャンを集めてバンドを建て直し、カンポットを拠点に活動中。
JULIEN以外は全員カンボジア人!何のお仕事でも一緒のことが言えると思うけど、カンボジア人と一つのことを成し遂げるって大変だと思う。でもサウンドは明らかに年々良くなってるのが凄い。
2025年2月には、日本のレゲエアーティストERIKA CRYMSONをフューチャーした新曲を発表予定! Julienが「めちゃくちゃいい!」と唸ったERIKAの歌声とCambodian Space Projectのサウンドのコラボレーションがとっても楽しみ! |
ERIKA CRYMSONに聞きました!
◉影響を受けたアーティストは?
SISTER NANCY, SISTER CAROL, SISTER AISHA
◉2025年の推しアーティストは?
SOOM T, QUEEN OMEGA, NAOMI COWAN
Dub Addiction
2011年から活動中。ドイツ人のProfessor Kinskiのずば抜けたセンスが光るレゲエ・ダブバンド。ボーカルのDJ Khlaはヨーロッパに亡命している政治活動家。現在、Kinskiはドイツに帰国しているが、カンボジアで
活動しているバンドのプロデュースをし続けている。2010年代はプノンペンでもヨーロッパでも何度もライブをしていたのに、、、今ではおそらく見ることはできないだろう。復活してほしいと心から願うバンドの一つ。
2013年リリースのアルバム。個人的にはどのアルバムもめちゃくちゃ好み。彼らの作品は、すべてBANDCAMPで購入可能なので、ぜひチェックしてみてほしい。
LES KHMERS(レ•クマイルス)
2022年デビュー。リーダー・ボーカリスト、野辺祐介氏のこだわりがアツい!1960~70年代のカンボジアのガレージロックを演奏するバンドとして活動を始め、カンボジア民謡から、最新のヒットナンバーまでカンボジア語で次々と歌い上げる姿は圧巻!1970年のカンボジアにトリップしたような感覚にまでさせてくれるライブを繰り広げている。
毎年恒例の代々木で開催されているカンボジアフェスティバルはもちろん、他のフェスティバルにも出演をし、話題沸騰中!今要注目のバンドです!
YOUTUBEじゃなくて、ぜひ生で彼らを見てほしい。気がつけば踊ってしまう、まさにROM ROM ROMなひと時を味わえます! |
クマイルスのボーカル野辺さんに聞きました!
◉影響を受けたアーティストは?
Sinn Sisamouth
◉2025年の推しアーティストは?
Vin Trapz
以前から作曲家として楽曲提供の形で数々のヒット曲を送り込んできましたが、2024年はラッパーとして彼自身の人気も高まってきました。2025年に新しいクメール音楽を築き上げるのはVannda と並んで Vin Trapzだと思います。
カンボジアの音楽をもっと知りたい方へ
1994年にアメリカ人のPaul Wheelerさんが、シェムリアップに旅行中、カンボジア音楽に興味を持ち、ローカルマーケットでカセットテープを購入したことがきっかけで、ニューヨークの Parallel Worldというレーベルがレコードにして1000枚をリリース。
アルバムに収録されているロ・スレイソティアのハイトーンボイスは、カンボジア音楽の特徴でもあり、あんなに高い声で、ピッチもリズムも正確に歌える人は、この先もう出てこないかもしれない。
一曲、このベース絶対間違えてる!とずっと思っている曲があるのだが、バンドの勢いがありすぎて、もう間違っててもいいや!と思わせる勢いが癖になる。
完売したものの、中古でよければ、インターネットで購入可能。当時いくらだったかわからないですが、今は100ドルくらいします。 |
映画もあります!
Don’t Think I’ve Forgotten
フランスの影響と、南米の影響をうまく融合させた1960年代のカンボジアの音楽シーンを、ドキュメンタリー映画で見ることができる。
生バンドのパワフルさ、カンボジア語の耳障りの良さ、そしてジャケットの色使いが絶妙なバランスでまとまっている。
カンボジアの1960、70年代の音楽シーンがたっぷり詰まった映画になっていて必見!今、カンボジア語と英語でしか見られないので、日本語訳をリリースしてほしい。
おまけ
OSAKA Music LOVERS BAND
2006年からシェムリアップで活動しているMiloの浦田彩が日本に帰国してから加入したレゲエバンド。2025年に7インチのレコードをリリース予定。
デビュー曲「Aprey Te Roub」は、カンボジアの踊りsaravanの曲。カンボジア人アーティストにお願いし、歌や伝統楽器を録音したものを日本に持ち帰り完成させた。
先ほど紹介した、DUB ADDICTIONのPROFESSOR KINSKIさんにのDUB MIXをお願いしたところ、快く引き受けてくださり、ノリノリのKINSKIさんの声も楽しめる。 |
OSAKA Music LOVERS BANDのベース、
Yahmaに聞きました!
◉影響を受けたアーティストは?
Sly and Robbie, 笹井克彦(師匠)
◉2025年の推しアーティストは?
Kover with KAI
KAIバンドのメンバーでもあるSax奏者のChallyくんにカンボジアで知り合ったのがきっかけでKAIバンドを知りました。まだ若手で荒削りな感じが初々しく、でもまだまだ伸びしろがあるので、今後の活動に注目!カンボジア語でのオリジナル曲はもちろん、今まで色々な音楽経験をしてきたChallyくんがこれからどんなアレンジで曲を展開していくのかも楽しみです。
最後に
今、カンボジア人ミュージシャンの流行りはヒップホップなので、音圧や勢い、緊張感に欠ける気がする。バンドシーンがもっと盛り上がると、また面白い時代が来ると思っているので、ヒップホップも生演奏できるようなバンドが誕生すればいいなと願っている。
あと、カンボジア人ミュージシャンは、ほぼデジタルリリースしかしていないので、CDかレコードでリリースする「作品」を作って欲しい。1960年、70年代に国内を熱狂させるほど、力があったカンボジアの音楽。「2020年代からやばかった」と思わせるような、後世に残る作品を心から期待している。
寄稿:山内彩椰 AYA Yamanouchi
2006年からシェムリアップで音楽集団miloとして音楽活動を始める。シェムリアップ州の小学校で音楽の授業をしたり、カンボジア人とバンドを組んで、カンボジア国内で数々のライブをした。
2017年に帰国。京都府八幡市を拠点に、関西のいろんなレゲエバンドに入れてもらって、音楽活動を継続中。
毎年2月ごろカンボジアに行くようにしていて、現地でライブやレコーディングしたりしているので、ぜひ会いに来て下さい。
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