カンボジアクロマーマガジン13号
いつか見た映画のような旅 カンボジア最高峰アオラル、深い森と共生する人々と歩く
2日目 午後 アオラル山中腹(チョンノアターアイサイ)~山頂~中腹
荷物番として村人一人を残し登山を再開する。ここからピークまで後2時間ほどだそうだ。いつの間にか先頭が村人に変わっている。レンジャーと言ってもこの村の育ちではないため道がはっきり分からないうえ、講習で山でのサバイバル技術は学んでいても体力が伴っていないようだ。機敏に動く村人に較べて息切れが激しく、スピードも落ちてきている。
ふと小さな違和感がありズボンをめくりあげる。いつの間にか小指の頭ほどもない小さなヒルが太ももにくっついている。痛くも痒くもないが、血を吸ってまん丸に膨らんでいた。
急なスコールが始まり、大木の下で雨宿りとなった。まだ雨季に入っていないが、山の天気は変わりやすいということだろうか。高い木の葉から落ちてくる大粒の水滴。半時間ほど経過したころ木々の木漏れ日が輝きだした。
同行していたレンジャーはここで力尽き、村人の案内のみとなった。どこから見つけてきたのだろう、オレンジ色の大きなキノコを大事そうに持っている。食用として家で待つ子供達に持って帰るそうだ。
オレンジ色の茸は村人の大事な食材となる
何もなく、木々がうっそうと茂っているだけのしんとした静寂な空間。到着した山頂部には小さな仏陀が座っていた。坐像前には「MT.Oral 1813m」と刻まれ、後ろにはカンボジア国旗と仏旗が掲げられている。他には目的は達した。少し休んだのち、日が高いうちにと下山を開始する。途中、休んでいたレンジャーと合流し、やっとの思いで辿り着いたビバークポイントでは村人が焚火を始めていた。連れてきた鶏を食材に交え、今日の宴を楽しんだ。
山頂部の仏陀坐像。カンボジアには敬虔な仏教徒が多いことがこのことからも窺える 本部から派遣されたレンジャー。知識はあれど体力が伴わない
3日目 アオラル山中腹~アオラル山麓
カンボジアと言えど山間部の夜は肌寒い。念のため厚着をしていたが、それでも少し足りなかったようで、夜中幾度か目覚めることとなった。
空が白けてきた頃、出発に向けてのそのそと人々が動き出した。ハンモックやターフを片付け、朝食を準備する。朝食と言っても昨晩の残りと乾麺といった簡単なものだ。
後は下るだけだ。昨日来た道を再び歩く、昨日感じなかった涼しい風と爽快感を体に感じる。
到着した東屋で村人たちに礼を告げる。記念に写した村人たちの写真。再び登りに来ることがあるかどうかは分からないが、いつの日か渡しに来たいと思う。
水辺には様々な小花が咲いている
[註1] シェルパ: 登山の荷物運びや案内役。
[註2] ビバーク:テントを張るスペースがない場合や、軽量化のためにツェルトなどを張 って着の身着のまま寝ること。
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