カンボジアクロマーマガジン34号
教えて!クロマーじいさん カンボジア州名トリビア
●南東部
13、真ん中じゃないんだけど… カンダール州
14、信心深い貴婦人と仏像の出会い 首都プノンペン
15、マジカル僧侶の出世話 タケオ州
16、アレの国内シェア堂々のNo.1 コンポンチュナン州
17、今は無きメコン川の大きな森 プレイベン州
18、フルーツか、はたまたフランス人か スヴァイリエン州
13.カンダール州 Kandal
首都を取囲むベッドタウン
カンダールとは「中部」という意味で、かつて同州がカンボジアの中央に位置していたことに由来している。現在はベトナムの領土であるメコンデルタ一帯はカンプチア・クロムと呼ばれ、かつてのカンボジアの領土であった。現在のホーチミンには、かつてプレイノコール(森の街)というカンボジア人の商業都市が存在したが、17世紀にカンボジアの国力が衰えると、カンプチア・クロムは次第にベトナムに占領されていく。その後の仏植民地時代、第2次大戦を経てカンプチア・クロムはベトナムに編入されるが、その名残で、カンダール州は今も中部と呼ばれている。
面積 3,568km²
人口 1,280,781人
見所 古都ウドン
17~19世紀までの王都跡。ウドン山には仏塔が5本建ち、見晴らしも良い
名物 銀細工
クメール王朝時代から受け継がれる、細かい装飾が施された銀工芸品
14.首都プノンペン Phnom Penh
経済発展著しいカンボジア特別市
プノンペンとは「ペンさんの山」という意味である。14世紀、メコン川の畔を散歩していたペンという貴婦人が、川辺に流れ着いている仏像を見つけた。川の遥か上流から流れてきた仏像を憐れんだペンは、近くの丘にこれを安置して奉る。その後この地は王都として栄えていくが、当初一帯は湿地帯で見晴らしが良く、この地を訪れる者はこの丘を「ペンさんの山」と呼んで目標物にしていた。これがいつしかこの地の名称として定着していき、プノンペンと呼ばれるようになった。また、後に丘には寺院が建立され、今のワットプノンとなっている。
面積 376km²
人口 1,501,725人
見所 王宮
煌びやかな寺院や王族関連の建物が立ち並んでおり、手入れの行き届いた庭園が美しい
名物 パン
一昔前まで、地方にベーカリーがなかったことから、未だにプノンペン土産はパンが人気
15.タケオ州 Takeo
遺跡や伝統産業の残る文化の地
11世紀、同州にあるプノンチソー寺院には王族が住んでおり、その姫君ニアンクマウは大変美しいことで有名だった。ある日、ニアンクマウは盗賊スレイに呪いをかけられ、スレイに恋をしてしまう。困り果てた王は、魔法使いの僧侶ケオを呼び、盗賊の呪いを解かせた。しかし、呪いが解けたニアンクマウは、ケオに心を奪われてしまう。ケオは僧侶であったが、彼女の強い求愛に負け還俗して結婚し、次世代の王となりこの地を収めた。またケオ王は大変長生きで、そこからこの地がタケオ(ケオじいさん)と呼ばれるようになったという。
面積 3,563 km²
人口 974,034人
見所 タマウ野生動物保護公園
国内最大の動物園で、ゾウやトラなどの野生動物を見られる
名物 シルク
自然染料で染めた伝統絹織物。国内の大部分の絹織物がこの地で作られている
16.コンポンチュナン州 Kampong Chhang
古から栄える陶工たちの街
コンポンチュナンとは「鍋の港」を意味し、同州の特産品が素焼きの土鍋であることから、このように命名されている。コンポンチュナンでは焼き物に適した粘土が採掘できるため、古くから陶芸の街として栄えた。クメール王朝時代にはクメール焼きと呼ばれる高度な焼き物技術が存在したが、王朝の衰退に加え、ポルポト政権下では窯業が禁止されて資料が焼却されたため、それらの技術は歴史の闇に消え去った。しかしながら日用品として使用する素焼きの技術は今日にも受け継がれており、国内では同州産の陶器が広く流通している。
面積 5,521km²
人口 529,561人
見所 陶芸村
クランダイメアス山付近には窯業を生業とする村が点在しており、伝統技術も見学できる
名物 陶器
コンポンチュナンの粘土で作った素焼きの土鍋や土瓶、七輪などの日用品
17.プレイベン州 Prey Veng
メコンの恩恵を受ける農業州
メコン川の氾濫域が州の大部分を占めるプレイベン一帯にはかつて、広大な森が広がっていたことから、「長い森」と命名されたと言われている。仏植民地時代には、豊富な水資源と森に蓄えられた養分が農業に最適と評価され、焼畑を行ってゴムのプランテーションを作ったと記録されている。その後、仏領から独立した際、農業政策により大規模な焼畑が行われたため、森は急速に減少して1970年頃には消滅した。長い森の「長い」には長く繋がった森という説と、背の高い森という説があるが、森が失われた今、真相は闇の中である。
面積 4,883 km²
人口 1,186,771人
見所 バ・プノン
2~6世紀の扶南の都「ウィヤーダプラ」が築かれた聖山
名物 オニテナガエビ
体長30cmにもなる大型のエビで、こってりとしたエビ味噌が美味
18.スヴァイリエン州 Svay Rieng
ベトナムに突出した工業地帯
スヴァイリエンという名前の由来は諸説ある。ひとつはこの州がプレイベン州から分割された際に、スヴァイ○○という村々がいくつか連なっていることから「整列したマンゴー」と名づけられたという説である(スヴァイとはクメール語でマンゴーの意)。もう一つの説が、仏植民地期にこの地域を治めていたフランス人当主、ソア・リエンが、自分の名前をこの地の名前にしたという説だ。一方、ベトナム戦争期にはベトナム国土に突出した同州の形状から「オウムのくちばし」と称された。バベット国境からホーチミンまでの距離はわずか62kmで、南北両軍にとって重要な戦略地点となった。
面積 2,966km²
人口 607,964人
見所 カジノ
ベトナム国境のバベットにあるカジノ。ベトナム側にある免税店ではショッピングが楽しめる
名物 ノム・オンソーム
もち米やバナナ、ジャックフルーツなどをヤシの葉で包んだちまき
メコン川の氾濫域が州の大部分を占めるプレイベン一帯にはかつて、広大な森が広がっていたことから、「長い森」と命名されたと言われている。仏植民地時代には、豊富な水資源と森に蓄えられた養分が農業に最適と評価され、焼畑を行ってゴムのプランテーションを作ったと記録されている。その後、仏領から独立した際、農業政策により大規模な焼畑が行われたため、森は急速に減少して1970年頃には消滅した。長い森の「長い」には長く繋がった森という説と、背の高い森という説があるが、森が失われた今、真相は闇の中である。