カンボジアクロマーマガジン44号
激動の時代を乗り越えて、カンボジア映画界は少しずつ再生の道を辿っている。
カンボジアに平和の兆しが訪れるとともに映画制作は徐々に再開され たが、主流はパターン化したホラー作品などで質量ともに不安定であった。人材、製作費、機材の圧倒的な不足から、良質な国産映画は生まれにくい。海賊版DVDの横行や娯楽の多様化も人びとを映画館から遠ざける。また、映画を学べる教育機関や施設はなく、次世代の映画人が育たない。こうした状況下、リティ・パンの呼びかけで2006年にボパナセンターが設立され、以来、消失を免れたカンボジア映画の収集と公開を通じて失われかけたカンボジアの文化的記憶を社会へ還元し、人びとの映画を観る習慣の恢復を支えるとともに、映画制作者を養成する努力が続けられている。職業映画人が国内で安定的に制作し続けることは現在も容易ではないが、多くの人びとの草の根の努力が実を結び、現在若手のカンボジア人映画作家が画期的な作品を世に問い始めている。
また、文化芸術省映画部と協働する映画製作コーディネーション機関カンボジア・フィルム・コミッションの設立により、各国との合作映画も近年増加している。
国内で催されるようになったさまざまなテーマの映画祭も、カンボジア人映画作家にとっては発表の場として、観客にとっては劇場の大画面で映画を楽しむ祝祭として、映画文化の復興に貢献しているといえよう。ぜひ観ておきたい現代のカンボジア人映画監督10人は、順不同でリティ・パン、マオ・アユット、チャイ・ボラ、ダヴィ・チュウ、ポヮン・プォン・ボパ、ソト・クォーリーカー、ソク・ヴィサル、リダ・チャン、ポレン・リィ、パリー・グーム。
『The Missing Picture(消えた画)』より
写真提供:ボパナセンター
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- 第二回 : クメール・ルージュ期 カンボジアクロマーマガジン43号
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