まだ見ぬカンボジアに出会う小旅行へ―現地発カルチャー&旅行情報誌「クロマーマガジン」

　カンボジアに参りまして19年、この間、シェムリアップ州以外の学校へも出張美術授業をしてきました。これまで一度も絵筆を握ったことのない子ども達にとって、見るもの、触れるもの全て初めて尽くしの経験に、子ども達は、心躍らせ、弾む心で夢中で絵の具を置いて行きます。その喜びに満ちた子ども達の表情は、まさしく「心に火が灯った」瞬間の光景でした。

今回、ご紹介するドーン・ソッペアック、ソウ・ソバンモニーも、このスクールで学ぶ中で「心に火が灯る」ことに出会ったように思えます。

笠原知子

題名「Flower of Hope 」2024年White Canvas Contest Silver Prize 受賞

高校2年の時、家計が苦しくなり学校を中退して家業の洗濯業を手伝うことになりました。

子どもの時から絵を描くのが好きで、教科書や本に載っている絵を真似て描いていましたが、学校をやめてからは、今日一日の仕事をこなすだけで精一杯の日を送っていました。そんな日々を送っていた時、無料の美術学校ができたことを知り、何とか時間を見つけて2011年から小さな美術スクールに通い始めました。美術表現を学ぶ中で、ただ働くだけの日々とは違う、別の世界があることを知りました。この経験から、子ども達に創造する喜びを伝えて行きたいと思います。

ドーン・ソッペアック

題名「Hope One Day 」

高校生の時、無料の美術スクールができたことを知り、2014年からスクールに通い始めました。いろいろ試して、自分の表現領域を広げて描く方法に、創造する楽しさを知りました。高校卒業後はITを学びたいと思っていましたが、家に経済的余裕がなく進学が難しい状況でした。

そのような時、スクールから進学を応援いただき、大学で、念願のコンピュータ技術を専門的に学ぶことができました。動画編集など、私自身のできることが増え、世界も大きく広がりました。スクールの子ども達に、絵の具やいろいろな材料を使って描く表現を大切にしながら、デジタルの世界も教えていければ、と思っています。

ソウ・ソバンモニー