ホーム 新マガジン記事 カンボジア建築紀行: 【カンボジア 建築紀行】 都市の暮らしを支える建築 ― セントラルマーケットの保存と更新

カンボジアクロマーマガジンPP17号

カンボジアのモダニズム建築を日本人建築士の視点から紹介する本企画。最終回となる第6回は、プノンペン中心部に建つセントラルマーケット(中央市場)を取り上げます。1937年、フランス植民地期に建設されたこの市場は、建築家ジャン・デボワらにより設計され、中央に大きなドームを据え、四方へ放射状に通路が伸びるダイナミックな構成が特徴です。完成当時はアジア最大規模の屋内市場の一つとされ、現在も約3,000以上の店舗が集まる活気ある都市のランドマークとして市民に親しまれています。

2009年からの大規模改修・増築計画では、市の設計コンペによりヴァン・モリヴァンが選ばれ、歴史的建築を尊重しながら再生する計画が進められました。モリヴァンは、建築を単体で完結させるのではなく、都市の構造と人々の生活の流れ(回遊性・通行性)を結びつけることを重視し、外部に開かれた歩行者回路や商業動線を整備することで、市場と周辺都市空間が一体となる都市構成を意識しました。

改修では、外観やドーム構造などの歴史的価値を守りつつ、衛生設備や通路の整理、安全性の向上など、利用者が快適に過ごせる環境づくりも進められました。今も市民に愛され、日常的に使われ続けるこの市場は、ヴァン・モリヴァンが最後に携わった作品のひとつとして、保存と更新のあり方を静かに問いかけています。

一級建築士 尾形雄樹

株式会社翔設計 プノンペン支店

社会ニーズの高度化・多様化に対応する建築総合コンサルティング企業です。建築・構造・設備の専門技術を活かし、新築・リノベ・FM・PMCなど多様な段階・手段で建物の課題を包括的に解決。
プノンペンを海外拠点とし、グローバルに事業を展開。

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