カンボジアクロマーマガジンPP14号
2025年春の段階では、カンボジアの前年のGDP成長率が6.0%と高かったこともあり、2025年も順調な成長が予測されていました。GDP成長率の予測は、アジア開発銀行(ADB)は6.1%、国際通貨基金(IMF)4.0%、世界銀行4.0%、ASEAN+3マクロ経済調査事務局(AMRO)5.8%等でした。
しかし、4月に発表された米国のトランプ関税の影響や、7月に激化したタイとの国境紛争等の影響もあり、今後、成長率予測を引き下げる方向と見られます。8月5日に発表されたAMROのカンボジアとの年次協議報告によると、カンボジアのGDP成長率については、2025年5.2%、2026年4.7%と弱含むと予測しています。
7月31日に、米国のトランプ大統領は相互関税の新たな税率を各国に課す大統領令に署名しました。4月の発表では、カンボジアの税率は49%と中国に次ぐ高い税率でしたが、今回は大幅に引き下げられて、19%となりました。
カンボジアにとって、米国は最大の輸出先であることに加え、米国向けの主要輸出品目が縫製品・旅行用品となっています。このため、カンボジア経済の主要エンジンである縫製業に大きな影響を与えるものと懸念されていました。周辺国とほぼ同等の19%で決着したことで、発注を他国に奪われる可能性も低下したことで一息ついていると見られます。
ただ、これまでは、米国向けの税率は特別特恵関税で、ほぼゼロであったものが、19%に大きく上昇することとなり、米国での需要減退や他国製品との競争激化も危惧されます。今後も引き続き関税を引き下げるための交渉を継続するとともに、輸出品目と輸出先の多様化に向けた努力が期待されます。
鈴木 博 CEO/チーフエコノミスト
カンボジア総合研究所(BRIC)
Business Research Institute for Cambodia
カンボジアの発展と日本企業のWin-Win関係の構築を目指して、経済関係調査、情報発信等を行っています。
Web: https://cambodiasoken.hatenablog.com/
『カンボジア経済』 BLOG: https://economistphnompenh.hatenadiary.com/
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