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カンボジアクロマーマガジン45号

アンコールの聖地をめぐる パワースポット巡礼紀行

[取材・文] 矢羽野 晶子 [制作] 田中 友貴

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王都を見守り続けた神々の宿る山
アンコール三聖山

 シェムリアップをぐるりと囲み、まるで街を見守っているかのような3つの山。ロリュオスからアンコールに都を移した遷都王ヤショーバルマン1世が、同時期に3つの山の頂に寺院を建立したことから「アンコール三聖山」と呼ばれる。


急勾配の後に広がる田園風景

プノン・ボック  
 三聖山の中では235mと最も標高の高いプノン・ボック。麓からしばらく歩くと、約600段に及ぶ、山頂へとまっすぐ伸びる階段が現れる。遠回りしない分距離的には最短だが、勾配はかなりきつい。途中踊り場もなく、一寸つまずけば転げ落ちそうな急階段。しかし登りきると、地平線まで伸びる一面の田園風景が広がり圧巻だ。さらに山頂には、プルメリアの木が絡みつく崩れかけの遺跡が、威風堂々と存在感を放っている。今は盗掘されてしまったが、当時はブラフマー、ビシュヌ、シヴァのヒンドゥー三大神が祀られていたという。寺院から少し離れた場所には破壊された巨大リンガが横たわる。  リンガと遺跡の中間から伸びる自然道で下山した。階段と比べると距離が長く30分程度かかるが、木々に囲まれた山道をのんびり歩くのはなかなか楽しい。

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頭から花が咲いているような遺跡。
その姿は滑稽でも幻想的でもある

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一直線に伸びる急勾配の階段

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アンコール王都の護国寺
プノン・バケン
 アンコール・トム南にある小高い丘。ヤショーバルマン一世はここを王城ヤショダラプラの中心と定め、山頂に国家鎮護の寺院を建てた。今はもう残っていないが、かつては一辺4kmの環濠や城壁で囲まれていたという。  高さ60mという低い山だけあり、山頂はすぐそこだ。正面からの急勾配の参道は山崩れを起こしていて、今は通行禁止のため、迂回路を利用して山頂へ。山道は意外にも緑深く、木漏れ日がまぶしい。季節柄か、ひらひらと蝶が楽しげに舞っていた。  祠堂が見えた。平らな頂にどっしりと建つピラミッド型寺院。急な階段を登ると、大勢の人々が夕日を待ち構えていた。ここからは360度のパノラマが広がる。東にアンコール・ワット、北にはプノン・クーレン。そして、西には地平線に沈む夕日。夕暮れを反射した中央祠堂が赤く輝いていた。

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沈みゆく夕日。
今かと待ち構えていた観光客が一斉にシャッターを切る

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遠くに見えるアンコール・ワット

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水平線を見下ろす
プノン・クロム
 トンレサップ湖の手前にあるプノン・クロムは、三聖山の中では最南端に位置する。木の伐採や岩の切り崩しの結果だろうか、むき出しの岩肌に雑草がぼうぼう生えている。急斜面に作られた階段を登りきると、無数の山羊が草を食んでいた。  他の二聖山と比較すると、土地柄のせいか、のどかで大らかな空気感がある。遠くにはトンレサップの水平線が伸び、点在する高床式の家々が見える。  ゆるやかで広い山道を登りきると山頂だ。現存する遺跡でヒンドゥー三大神が残るものとしては唯一の寺院。その堂々とした姿は、ここを聖なる場所と定めた王の意志を感じさせる。  雨季本番になると湖が山の麓付近まで伸長し、水面に反射した真っ赤な夕日が見られるという。かつての王たちに思いを馳せながら、美観に身を任せるのも一興だ。

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雨季の最中には山の麓まで水辺がきて、
周辺の民家は水没する

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三大神を祀っている山頂の遺跡

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※いずれも市街から遠く人気が少ないため、カンボジア人ガイドの同行が望ましい。
 山には街灯もないため夕方以降の入場は注意が必要。基本単独で登らないこと。

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