カンボジアクロマーマガジン29号
カンボジアの消防と救急
First Aidの普及
本年7月、私はカンボジアの国立病院から依頼を受け、カンボジア救急隊の応急手当指導者の育成に従事しました。
今後、カンボジアの救急隊員が、一般市民や民間企業などへ応急手当を普及すること、そして、その応急手当指導により税収を得て救急隊を運用するしくみが必要だと思います。
このことによって、これまでのような諸外国からの援助に頼るのではなく、救急医療分野の自立発展の一助として、最近流行のBOPビジネスのような社会的課題の解決に貢献できると考えています。
カンボジアの救急隊員に応急手当の教え方を指導する中で感じたことは、不思議なクメール語を話す外国人指導者よりも、カンボジア人指導者のほうが教え方が素晴らしく上手なこと。実際にカンボジア救急隊員が一般市民に応急手当を教えると、まるでテレビのコントのように楽しくアレンジし、人々がとても楽しそうに応急手当を学んでいました。
足りないのは人財と自立発展性
国際協力では、「魚を釣って与えるのではなく、魚の釣り方を教える。」とよく言われます。
しかし、これでは上から目線。魚の釣れる場所や美味しい食べ方を一番知っているのはカンボジア人なのです。
その釣り道具をカンボジアで購入するなどの自立発展のしくみは、カンボジアの文化・習慣に精通しているカンボジア人と共に考えていくことが不可欠。
消防・救急の自立発展のためには、まずカンボジア人の指導者、人財を育成すること。それが私の役目だと思っています。
1973年神奈川県相模原市生まれ。大学卒業後の1995年から2年間、JICA青年海外協力隊としてカンボジア在住。帰国後、消防士として働く傍ら、クメール語教材の制作や講座の開催、大学院でのカンボジア研究、カンボジアの消防・救急に関する調査研究及び技術指導に取り組む。