障害者教育の欠如
上座部仏教の概念のひとつに「カルマの法則」というものがある。現世は前世の行いによって、その命運が左右されるという考えだ。生きているうちの徳を積みなさいというありがたい教えであるが、実は負の側面を生み出している。仏教を深く信仰しているカンボジアにおいて、障害を前世の「罰」とみなす考えが根付いているのだ。それ故にカンボジアでは障害者が社会から差別を受け、隔離され、教育を受ける機会もなければ、働くこともできない状況にある。
そんな風潮を変えるべく、カンボジア教育省は、障害児にも教育を受ける機会を与えるとのプログラムを開始した。このプログラムに参加した学校は3400校以上で、2014年現在、2300人以上の教師が障害児向けの教育者養成コースを受講し、教育現場には1200冊近い点字と手話の教科書が配布された。
2015年4月3日、これらの取り組みについて教育省はレポートを発表。成果は期待できるとの見方を示したが、オブザーバーたちの意見には、懐疑的なものが多い。
「学びの場も含めて、まだまだ満足な状況にあるとは言えません。身体的な不自由や軽い障害ならば、授業に参加することもできますが、多くの子供たちは重度の障害をかかえていて、学校に通うことすらできません。」と、カンボジア障害者機構(CDPO)の責任者は話す。
車椅子で登校する子供たちにしてみても、スロープや洋式トイレを備えている学校は10%しかなく、ほとんどの子供たちは学校が遠すぎて、通い始めて間もなく中退してしまうという。ダウン症や発達障害をもつ子供たちの多くもまた、学校へ通えていない。
カンボジアのほとんどの学校では、まだまだ障害児たちへの配慮は足りないのが現状のようだ。
教育省の取り組みのように、新しい教育システムは広がりをみせつつあるが、人々の持つ障害への偏見は未だに根強い。障害者を守るための環境を整えることと同時に、「障害は恥」という社会の風潮を変えていくこともまた大きな課題となっている。
http://www.phnompenhpost.com/national/disabled-education-lacking