投資制度・法律
Contents
- 投資・ビジネス関連法令の概要
- 憲法
- 投資法
- 税制と会計
- 貿易及び通関制度
投資・ビジネス関連法令の概要
カンボジアにおける法規序列は以下に記す通りである。
1) 憲法(The Constitution)
2) 国際条約・規定(Treaties & Convention)
3) 法律(Law)
4) 勅許(Royal Kram / Royal Degree)
5) 政令(Sub-Decree)
6) 省令(Ministerial Order)
7) 決定(Decision)
8) 告示(Circular)
9) 州令(Provincial Deka)
カンボジア政府は1994年にカンボジア投資法を制定した。2000年代になると国策として外国からの投資をより奨励し、投資法の改定や政令の発行を行い法整備を進めた。その後2007年から2010年にかけて、民法と民放的用法の制定・施行や、投資・貿易・ビジネス領域の法令を更新するとともに、新しい法令の制定を行ない、投資優遇措置や特別恩恵関税制度など、外国投資家にとってメリットの大きい法令の整備が進められた。
投資・ビジネス関連法令の一覧及び条文はCDCのホームページ内、法律・法令のページを参照。
http://www.cambodiainvestment.gov.kh/ja/laws-regulation.htmlその他、ビジネス展開に関わる法制度、新たに成立・施行された法令、会社制度などに関する解説は、下記のCDC制作のPDFを参照されたし。
http://www.cambodiainvestment.gov.kh/content/uploads/2011/09/Chapter-3.pdf憲法
カンボジアの憲法は、1993年9 月24日に公布され、1999年3月4日に一度だけ憲法改正が行われている。
現行の憲法では、国王は君主であるものの統治権を有しないとされ、日本と同様に立憲君主制度を採用することが明言されている。第三章では、法の下の平等、生命自由の保障、死刑の廃止、両性の平等な選挙権、政治的・経済的・文化的活動の自由、職業選択の自由、争議権、適正手続保障、表現・結社の自由、信条・信教の自由、財産権等、多様な人権規定が存在している。
カンボジア憲法で注意すべき点は、憲法上で外国人・外国法人に土地所有が認められていないことである。故に外国企業は所有権以外の権利を取得して、底地を確保することが必要となる。
投資法
カンボジア投資法は「外国投資法」ではなく、国内外投資を差別しない「共通投資法」である。カンボジア政府は1994年に制定されたカンボジア投資法を2003年に改正、2005年には「改正投資法に関する政令No.111」を発布し、投資恩典、奨励分野などを細則でより明確にした。また「経済特区の設置と運営に関する政令No.148」を2005年に制定し、製造業を含めた企業集積促進の方針を明確に打ち出している。
カンボジア投資法では、CDCより適格投資プロジェクト(QIP)の認定を得ることで、投資優遇措置を受けることができる。QIPに認定されると最長9年間の法人税免除や、生産設備の輸入関税免除などの税制優遇措置を受ける事ができ、今日のカンボジア投資における大きな目玉となっている。
但し、全ての投資がQIPの対象になるわけではなく、カンボジア国内で生産した製品を輸出し、外貨を稼げるプロジェクトや、今まで輸入していた製品を国内で生産するプロジェクトといった、政府がQIPとして奨励しているプロジェクトに限られ、金融や販売、運輸、建設、飲食店などのサービス業の投資については、基本的にQIPとして認可を受ける事ができない。
【QIPに対する投資優遇措置】
- 法人税の免税/特別償却の適用選択可能
- 法人税免税制度(選択制):タックス・ホリデーの期間は、「始動期間」+3年間+「優先期間」で構成
- 最長始動期間:最初に利益を計上する年または最初に売上げを計上してから3年間のどちらか短い期間
- 一部の生産設備及び建設材料等の免税輸入制度「国内志向型QIP:生産設備、建設資材及び輸出品生産のための生産投入材」「輸出志向型QIP :生産設備、建設資材、原材料、中間財、副資材」「裾野産業QIPs:一定条件を持つ生産設備、建設資材、原材料、中間財、生産投入用副資材」
- 法に規定される場合を除き、輸出税が100%免税
- CDC/PMISの認可を受けた場合、QIPの権利・特典を譲渡できる
【適格投資案件】
QIP不適格条件は「政令No.111付属1」で業種、投資規模(法定資本金額)により規定されており、主な条件は以下の通りである。
製造業
- 動物飼料製造:20万US$未満
- 皮革/金属/電気・電子器具/事務用品/玩具/スポーツ用 品/自動二輪車/陶磁器の製造:30万US$未満
- 食品/飲料/繊維産業/衣類縫製、繊維、履物、帽子の製造 /木を使用しない家具・備品/紙/ゴム製品/プラスチック製品/上水道の供給/伝統薬/輸出用水産物/輸出用穀類:50 万US$未満
- 化学品/セメント/農業用肥料/石油化学製品/薬の製造: 100万US$未満
不動産
- 商業施設:200万US$未満+US$/1万平方m未満(駐車場用 地なし)
- 国際会議場:800万US$未満
- ホテル:三ツ星以下
- 複合リゾート:50ha未満
- 病院:US$1,000,000未満、50床未満、エレベーター3階未満、 外科手術室、X線室、救急救命室、薬局、研究室、死体安置所
農業
- 水田:1,000ha未満
- 換金作物:500ha未満
- 野菜:50ha未満
家畜
- 家畜飼育:1,000頭未満
- 酪農場:乳牛100頭未満
- 養鶏場:10,000羽未満
植林
- 1,000ha未満 など
税制と会計
カンボジアの現行税制度は「税法改正に関する法律(2003年)」に規定されている。税金の種類は法人所得税、ミニマム税、源泉徴収税、給与税、付加価値税、その他があり、税率は細かく分かれている。また、会計原則として、アセアン会計士連盟(AFA)会議に加盟しており、国際会計基準委員会の基準に従い会計基準を作成しているため、一定条件を満たす会社は、公認会計士・監査士による企業監査が義務付けられている。
税制法人所得税の課税は「実態管理様式(申告課税)」、「簡易管理様式(簡易課税)」及び「推定管理様式(推計課税)」に分けられる。納税者の「管理様式(課税方式)」は会社の形態、ビジネスの種類、売り上げ規模に応じて決められる。また、カンボジアと他国の間において、二重課税を防止するための条約は締結されていない。
【カンボジアの税制】
法人所得税(Profit Tax)
法人対象で20% (投資優遇措置で9%か0%税率適時は別)、原油・ガスの生産分与契約、天然資源(木材、鉱石など)の開発では30%となる。
ミニマム税(Minimum Tax)
実態管理様式に適用(免税期間中のQIP除く)され年間売上の1%。ただし法人所得税が年間売上げの1%を超えた場合は法人所得税のみを支払う。
源泉徴収税(Withholding Tax)
個人コンサルタント等のサービス料収入、無形資産のロイヤルテイー、鉱物資源の利益支払い、支払利息が15%。動産・不動産の賃貸収入が10%、居住者の定期預金利息が6%、居住者の一般預金利息が4%、非居住者の利息、ロイヤルテイー、賃料や他の収入、配当などが14%となる。
給与税(Tax on Salary)
雇用者が源泉徴収を行なわなければならず、給与が0~500,000リエル(約125US$)以下は0%、500,001~1,250,000リエル(125~312.5US$迄)が5%、1,250,001~8,500,000リエル(312.5US$~2,215US$迄)が10%、 8,500,001~12,500,000リエル(2,215~3,125US$迄)が15%、それ以上が20%となる。別途、付加給付は市場価格の20%、非居住者は一律20%となる。
付加価値税(Value Added Tax: VAT)
実態管理様式の対象者である全ての会社はVAT業務開始前に登録を行う必要がある。他、連続する前3カ月の課税所得が物品販売で1億2500万リエル、サービス提供で6000万リエルを超えた場合は、30日以内にVAT登録を行なう必要がある。課税対象として、課税対象者による物品供給、課税対象者による物品の私用流用、物品・サービス原価を下回る贈答品の製作と供給、物品輸入がある。標準税率、輸出品及び国外提供サービスは10%となる。ちなみに輸入時にかかる税金は売上げにかかる税金から控除可能となる。またVATの申告は毎月一度行なう必要がある。
特定商品・サービス税
(Specific Tax on Certain Merchandise and Services)
国内・国際航空券に10%、国内・国際通信費に3%、飲料に20%、タバコ、娯楽、大型自動車及び125ccを超える2輪車及びそれらの部品は10%、石油製品、2000 cc以上の自動車とその部品には30%がかかる。
資産譲渡税(Property Transfer Tax)
不動産/自動車所有権を、個人/会社へ譲渡/寄贈した場合、4%課税される。税金を支払わないと資産所有権証明書の発行がされない。
遊休土地税(Tax on Unused Land)
未開発土地評価委員会が示す土地評価額の2% 。
登録税(Patent Tax)
企業の年次登録時に支払う税金で200~300US$程度。事業/会社が異なった州にある場合、それぞれ支払わなければならない。
家屋・土地賃貸税(Tax on House and Land Rent)
賃貸料の10% 。
輸入税(Import Duty)
改正投資法、または他の特別規則により免税措置が認められていない限り、入国地点で輸入貨物に輸入関税が課せられる。輸入関税は、基本的には0%(医療、教材等の免税品目など)、7%(第一次産品及び原材料など)、15%(資本財、機器材、国内調達可能な原材料など)、35%(完成品、アルコール、石油製品、自動車、貴金属・宝石など)の4区分に分けられ、輸入品には10%の付加価値税(VAT)が課税される。
輸出税(Export Duty)
10%程度。
【企業会計監査】
全ての企業は、自然人/法人を問わず、またカンボジア/外国企業を問わず、「年間売上が30億リエル(約75万US$)を超える」「監査年度の資産平均価格が20億リエル(約50万US$)を超える」「監査年度の平均従業員数が100人を超える」内2つ以上当てはまる場合は、各会計年度の財務諸表をカンボジア公認会計士・監査士協会に関する政令で登録されている監査士より、監査を受ける義務がある。
貿易及び通関制度
「商業会社の貿易業務に関する省令」により、商業省に登記した企業は自由に貿易業務ができると公布されている。また税関法により、輸入・輸出に関しては以前に較べるとスムーズな対応が進み始めている。別途、カンボジアは「EBA」「一般特恵関税制度(GSP)」「輸出適格投資プロジェクト」「アセアン自由貿易協定」適用をうけることも重要なポイントとなるであろう。
【貿易・税関に関する法制度】
現行税制度は「税法改正に関する法律(2003年)」により規定されている。「商業会社の貿易業務に関する省令(2000年公布)」により、商業省に登記した企業は自由に貿易業務ができる。また税関法(2007年施行)により、「輸出入物資に対し、関税やその他の税を管理・徴収する権限を行政機構に与える」「それら物資の輸送、保管や通過を管理・規制すること」「詐取や密輸の防止と駆逐の促進」「カンボジア政府の国際的通商政策の実施への参画」「通関手続きと通商円滑化の国際標準とベスト・プラクティスの適用促進」と定められている。
輸入・輸出
全ての輸入/輸出物資は、税関事務所などへの報告義務がある。
関税分類、通関、関税免除
- 関税分類、原産地、関税とその他の税を含めた、通関価格を記載し、税関確認後証明とされる。
- 税関が通関価格を証明するために、情報開示の義務がある。
- 税関は申告登録日から3年以内に輸入貨物の検査等を行い通知する。
- 不正が申請日より10年間以内に見つかった場合、追加関税や罰金等を税関に支払わなければならない。
- 輸出入の目的により貨物は分類され、関税等の税は関税表に基づき計算される。
- 輸入時は、貨物の原産地に従い関税等が課税される。自然物については収穫された国が原産地となる。
- 他国からの原材料を使用せず、同国で生産された製品は、その国が原産地となる。
- 輸入貨物の通関価格は「輸出するために売却された物は、支払われた取引価格」「通関価格が決定できない場合は、同一/類似商品の取引価格を使用」「前二項でも不明な場合、推定/算定方式」などの基準で決定される。
- 輸出商品の通関価格は、出国地点の商品価格となり、運送コスト、輸出業務費用などを加えて算出される。ただし輸出業者が領収書を有する輸出税、内国税、その他の賦課金等は含まれない。
輸入関税の免除措置、一部免除措置
免除措置
通過/積み替えのために持ち込まれた貨物、一部法令に定める輸入貨物、外交官/領事、国際機関/外国政府の技術援助機関の貨物
一部免除措置
農業用種苗や繁殖用動物、一時輸入貨物、一部法令に定める貨物や原材料
通関申告・税関保管
全ての輸出入貨物は、通関申告しなければならず、輸入者が関税などを支払う義務がある。税関・保税倉庫での保管時は、事業者に輸入関税などの支払い義務がある。書類や申告に問題がある場合、通関手続きは一時保留となり、税関の指示のもと税関にて貨物保管することがある。その間(一定期間)は税金がかからない。
輸出入手続き
貿易円滑化プログラム
電子通関システム(ASYCUDA)をもとにした、新しい通関申告書である「単一管理書類(SAD)」と、貿易関連の申請、通関、検査に適用されるリスク・マネジメント・システムを導入し、通関に要する平均時間は、輸出で4.3日、輸入で5.1日となっている。
後発開発途上国の輸出特恵
カンボジアは後発開発途上国として、米国、EUなどの先進国により最恵国待遇を与えられている。EU向けの輸出はEBA制度により、関税及び輸入割当て免除が認められる。米国、日本でも一般特恵関税制度が認められる。
輸出に関わる現地化比率と原産地規則
カンボジアに現地化比率規定は存在せず、輸出製品の生産輸入原材料・部品の使用については有害でければ制限はない。またカンボジアの輸出業者は、EBAを含む一般特恵関税制度(GSP)の原産地規則の規定を考慮する必要がある。EU向け輸出はEBAにより後発開発途上国に対し、ほぼ全ての製品が0%関税となる。一般特恵関税制度では、輸出製品は受益国原産でなければならず、輸出国の原産とみなされるには、原産地規則に定められた一定の基準(技術的基準、付加価値、その他の基準で決定)をみたさなければならない。
EBAでは、特別免除規定として一定の縫製品については、アセアン/EUからの輸入原材料(供給業者のGSP証明が必要)もカンボジア原産とみなされる。
輸出に関する優遇措置、制限、課税
「輸出適格投資プロジェクト」として、生産設備、建設資材、生産原材料、中間材料、副資材等を免税で輸入できると定めている。また縫製業・製靴業の適格投資プロジェクトは付加価値税も免除している。「輸出適格投資プロジェクト」と認定されると、タックスホリデー(法人税免除)や特別償却制度の利用が認められ、輸出に際しても原材料にかかる付加価値税の払い戻しが可能となる。骨董品、麻薬、有毒物、丸太、貴金属、貴石、武器については、輸出を禁止、制限がある。また、半加工/加工済の木材、ゴム、生または加工皮革、魚類(冷凍魚または切り身)、生きている動物、砂利・砂の輸出には10%の輸出税が課せられる。
免税輸入
適格投資プロジェクトの種類毎に、生産設備、建設材料、原材料、中間財または付属品の免税輸入を認めている。免税輸入許可を得るには、カンボジア投資委員会/経済特区委員会に毎年マスターリストを提出して、原材料の量・種類・価格を含む年間輸入計画を示す必要がある。
一般関税
改正投資法、または他の特別規則により免税措置が認められていない限り、入国地点で輸入貨物に輸入関税が課せられる。輸入関税は、基本的には0%(医療、教材等の免税品目など)、7%(第一次産品及び原材料など)、15%(資本財、機器材、国内調達可能な原材料など)、35%(完成品、アルコール、石油製品、自動車、貴金属・宝石など)の4区分に分けられ、輸入品には10%の付加価値税(VAT)が課税される。
アセアン自由貿易協定
アセアン加盟国(ブルネイ、インドネシア、マレーシア、シンガポール、タイ、フィリピン、ベトナム、ミャンマー、タイ、カンボジア)であり、加盟国間で締結される自由貿易協定による関税削減の適用対象となる。原産地規則を充たす場合、協定による特恵関税率によりアセアン諸国からの輸入物資に対して低率関税が適用される。