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カンボジアクロマーマガジン6号


朝の路地裏にて

プノンペンに好きな場所がある。
それはオルセー市場の北側に広がる、7マカラ地区の長屋街の路地裏である。
吐き気がするほど急速に、発展していってしまうこの街の中心地にありながら、ここだけの時間が、いつからか止まったままになっている。

道幅およそ4メートル、壁厚20センチぐらい。
ここではご近所さん同士がお互いの商店で買い物し、店番し合い、茶を飲み、将棋を打ち、子供の面倒を見合い、あたたかい。
そう、ここはヒューマンスケールのプノンペン。

そしてこの路地裏には、表通りに疲れた人たちが羽休めにやって来る。
スカートスーツの銀行員、銃を担いだ憲兵、サボりの役人、ぶちの野良犬。
街には空調の効いたお洒落なカフェが五万と出来たのに、何故か皆、今日もこの路地裏の薄汚れた屋台に足を運んでしまう。

おばあちゃん、今日も焼き鶏ご飯ね。
手羽じゃなくて、腿の方だよ。
あとタレは多めでね。
はいはい、あんたが来ると思って大きなやつを取ってあるのよ。
あと、珈琲も飲むよね。
おーい、そっちの店!この人にアイス珈琲を一杯!

こんな路地裏で喫するカンボジアの朝は、なんとも心地よい。
ここに来ると、やっと私もプノンペンに歓迎してもらえているように思えてくる。

ほら、ミカン色した小僧が背中をしゃんと伸ばして托鉢にやって着た。
さあ、お次は天秤棒を担いだ行商。
宣伝文句を復唱しながら、どんどん近づいてくる。


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