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カンボジアクロマーマガジン1号

ゆるり行く、コンポントム

[取材・文・写真] クロマーマガジン編集部

いにしえの時代から息づく、カンボジア農村の営み

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1.トンレサップ湖とセン川をはじめとする、豊かな水系の織り成す農耕地帯のコンポントム。特にセン川流域は年間通して耕作が行える地域が多い。 2.サンボー・プレイ・クック遺跡群の南西部、コンポンチューティアル村に架かる鉄橋。 3.道路脇の東屋に並べられた果物。近くにある農家の庭先で採れたものを売っているのだそう。 4.体色の白い牛は農耕用のコブウシ。田園の遠景に見える山はプノンサントック。5.村の木造家屋。高床は雨と暑気を払う生活の知恵。どの家の軒先にもバナナの木が生えている。6.コンポンチューティアル市場に並ぶ魚。こちらもセン川で獲れたナマズとトゲウナギ。

 

 鮮緑からこがね色へと移りゆく稲。空の下で揺れるヤシの茂み。泥にはまった水牛に、白いコブウシを追う人影。時に湧き上がる雷雲、灰色の雨。カンボジアの農村を訪れたことのある人ならわかるだろうが、熱帯サバナに生きる人間の原風景は、同国の最も印象的なシーンのひとつである。

 コンポントム州内で最も訪れ易い農村は、コンポントム市から車で30分ほどの所にあるオークルカエ、サンボー、コンポンチューティアルの三村だろう。これらの村は7世紀ごろ、インドシナ半島南部で強大な力を持った真臘国の王都イシャナプラ、現在のサンボープレイクック遺跡群の周辺にある。真臘国はオーストロネシア人の建てた扶南国の属国民であったクメール人が、550年に最初に興した国家であり、後のクメール王朝、そしてカンボジアへと繋がる曙の国であった。

 そんな歴史的背景を持つ同地域だが、住んでいる人はどこ吹く風、いたって平穏なカンボジア農村の日々を送っているようだ。人々は牛車や耕運機に乗って田畑へ行き、土と水とを掻き回し、水辺では罠漁や投網が行われている。土地で取れたもので腹を満たし、時に市場に持ち込んだり、庭先に並べてみたりしている。ついつい車で走り抜けてしまいそうであるが、ここは一旦立ち止まり、彼らの生きる音を聴き、空気を吸い込んで匂いをかいでみてはどうだろう。

 言語の壁があるため少しハードルは高いが、サンボープレイクック遺跡周辺の地元コミュニティが提供するホームステイも体験可能だ。伝統的な木造高床住居で、ローカルライフを満喫できると、バックパッカーの間で密かな人気となっている。お母さんが炊いた飯を食べ、水瓶の水を浴びて熱と埃を流す。そしてホタル舞う夜に見上げる満天の星空は、吸い込まれるように深く暗い。

 


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素敵なカンボジアに出会う小旅行へ―The trip to encounters unknown cambodia