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ホーム マガジン 写すシリーズ: アンコールから消えた門衛神を写す

カンボジアクロマーマガジン26号

 

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   上の写真はミャンマーの古都マンダレーにある仏教寺院マハムニパゴダで撮ったものです。人間のような巨大な青銅製の像が写っていますが、これはもともとアンコールにあったものなのです。王宮か寺院の入り口に立っていただろうと思われます。いかつい顔と身体つきが象徴するようにサンスクリット語でドヴァラパーラといわれる門衛神で、日本のお寺の山門で睨みを利かす仁王像みたいに外敵や悪霊の侵入を防いでくれるのです。
   しかしその力をもってしても防げなかった外敵が隣国のアユタヤ(タイ)でした。アンコールの都は15世紀にアユタヤ軍によって占領されてしまいます。そしてこの二体の門衛神は戦利品としてアユタヤに持ち去られてしまったのです。これが彼らの過酷な旅の始まりでした。というのもアユタヤもタウングー(ミャンマー)に敗れてしまい、このときも戦利品となって運ばれました。さらにまたタウングーがベンガル湾に面したアラカンに負けたときも、このアラカンがコンバウン(ミャンマー)に征服されたときも、その都度彼らは戦利品として持ち去られたのです。そして今から100年ほど前にやっとマンダレーで安住の地を得たというわけです。

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バンテアイスレイの門衛神

 

   それにしても、戦争に何度も身をさらしアンコールから1200キロもの移動を続けたにもかかわらず、青銅製の巨体が600年前の原型をほとんど損なわずにいられたのは信じ難いことです。どの国の軍隊も彼らを慎重に運んだに違いないし、どの都でも彼らの門衛神としての力を信じ大切に祀っていたのでしょう。今でもマハムニパゴダの参拝者は彼らの霊力を信じています。

   写真を見ると青銅製の体の様々な部位がてかてか光っていますが、これは参拝者たちが自分の体の患部と同じところを撫でると治癒するという信仰によるものです。この民間信仰に興味が惹かれてこの写真を撮ったのですが、それは30年前のことでした。そのときはこの二体のドヴァラパーラ像がアンコールの都を守護していたものだとは思いも及ばず、それを知ったのはずいぶん後になってのことでした。


樋口 英夫 (ひぐち ひでお)

写真家。アンコール遺跡にかかわる著書に『アンコールワット旅の雑学ノート(ダイヤモンド社)』『チャンパ(めこん)』『風景のない国・チャンパ王国(平河出版)』『7日で巡るインドシナ半島の世界遺産(めこん)』がある。
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