ホーム 過去のマガジン記事 特集: いつか見た映画のような旅 カンボジア最高峰アオラル、深い森と共生する人々と歩く

カンボジアクロマーマガジン13号

いつか見た映画のような旅 カンボジア最高峰アオラル、深い森と共生する人々と歩く

[取材/写真/文]:西村 清志郎(クロマーマガジン編集部)

 

 内戦が終了してまだ十数年しか経過してないカンボジア。この地に住む人にとっての登山はレクリエーションの一つではなく、食の為に強いられたものである。村人は山菜を探し、野兎や猪を狩る、その為に小さな獣道を切り開いていったのだ。近い将来、この国に楽しみとしての登山文化が入ってきた際に最も注目されるであろうこの山に、カンボジアのレンジャー、村人と共に最高峰を目指す旅へと出発した。

カンボジアに住む登山家から噂話を聞いた。
最高峰“アオラル山”、その登頂に成功した。標高1813メートル。コンポンスプー州、ポーサット州、そしてコンポンチュナン州へとまたがるカルダモン山脈の南東部、東南アジア本土最大の原生林地帯であり、アオラル野生動物保護地区に位置している。それがカンボジアの最高峰を誇るアオラル山として、インターネットを含め、数少ない文献から調べられる情報の全てであった。その情報の少なさからか、訪れる登山家は皆無に等しいようだ。

1日目 午前 プノンペン~コンポンスプー

  いつも使用しているものより大きなザックと、日常あまり使うことのない道具が狭い部屋いっぱいに広がっている。ガムテープ、紐、テントシートに蚊帳付きハンモック。他にも多くの物資を並べ、取りだしやすいように順番に詰め込んでいく。総重量15kg、本物の登山家からすると、それがどうしたと言うくらいの重さだろうが、鈍りきった体の自分には厳しい重さである。

vol13_sub_01-02           雨除けのターフと蚊帳付きハンモックは必須

  何人もの人々を介し、やっとの思いで探し出した現地のレンジャーステーション。彼らに登頂するために最低限必要な物資と、必要な日数、そしてメンバーを訪ね、彼らの同行も得られることとなった。できるだけの準備は整った。後は登るだけである。もしも登頂出来なければ戻ればいい。登山文化のないカンボジアでは登山というより、ちょいと大変な遠足、そして生活の一つといった認識なのだから…、そうシンプルに考えることにした。
  ザックを背負い、手配していた車へと乗り込む。山麓の村までの行き方すらまともに分かっていない。A1サイズの大きなカンボジア地図を広げ、おおよそのイメージで運転手にルートを伝える。4号線からコンポンスプーの町へと入り44号線へと入るルートか、5号線からウドン市場を経由し136号線へと続くルートと大まかに分けて二つ、そのどちらのルートかすらも不明である。とりあえず地図上に見える温泉マークに心を奪われ、4号線経由で行くことにした。

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  国道から44号線へと入った瞬間に赤土デコボコ道路へと切り替わる。速度が出ない一本道をまっすぐ進んでいくと、分岐点となる小さな村があり、道路の中央には象の親子と民族の彫像がある。少し昔にはこの近くにも野生の象が多くいたのだそうだ。
  シンプルな看板には“HOT WATER”と書かれている。温泉という概念がないからか“SPRING”にはなっていない。ぬるくまとわりついてくる硫黄のにおい。その正面にはぼろぼろに破れた袈裟をまとったネアックター(地元精霊)が棍棒を片手にこの周辺を護っている。温泉はケロケロケロッピのようなデザインにコンクリートが流し込まれている。ケロッピの口からポコポコと沸き上がってくる気泡。さほど水温の高くない場所で足をつける。炎天下にさらされている水はそれでなくても温かいだろうが、やはりそれ以上の温度を保っている。周辺を眺めると季節外れの赤とんぼが空を舞っていた。

vol13_sub_01-01           カンボジア唯一の温泉。今後開発が進んでいくことだろう

 

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素敵なカンボジアに出会う小旅行へ―The trip to encounters unknown cambodia